研究実績の概要 |
2015年度(2016年初頭)にASTRO-H 衛星の打ち上げが予定されており、超高エネルギー分解能で、広がった天体をX線観測できる新しい時代が始まる。銀河団を超高エネルギー分解能で観測できれば、今までとまったく独立な方法で、銀河団の重力分布、従って暗黒物質の分布を測定できる可能性がある。そこで、本研究では、その可能性を追求し、最新の検出器の性能を使用して実現性を検討している。平成26年度は3つの研究項目を予定していた。それぞれ次のように遂行した。 (1) SXS の応答関数の構築を継続する。: ASTRO-H の準備は順調に進み、SXSは、組み込んだ状態での機能試験を進めている。その間、各種機器の振動等の影響を十分に詳しく解析し、JAXA, NASAとの協力で、影響を小さくする方策を施し、目標のエネルギー分解能を達成できるようになった。そして、その分解能による応答関数の構築を継続している。 (2) SXSの最新の応答関数でシミュレーションを継続する。:目標のエネルギー分解能よりも、さらに良くなることを期待した応答関数を用いてシミュレーションを継続した。明るい銀河団であるペルセウス座銀河団を想定し、ガスの密度分布のモデルを仮定して投影の効果を考慮して、重力赤方偏移による輝線の中心エネルギーの変化と、幅を計算した。 (3) 将来衛星を睨んで、充分な重力赤方偏移を測定するために必要な、面積,観測時間、エネルギー分解能をシミュレーションする。:SXSを仮定しており、SXSでゴールとするエネルギー分解能(4eVFWHM)を、また、面積もSXSを想定して研究を進めている。その結果,中心では10~30ksecの観測で、0.2eV の決定精度となり、また、中心と中心から3分程度のずれたところで、明らかな違いの検出の可能性があることを示すことができた。
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