国際宇宙ステーション全天X線監視装置(MAXI)のGSC(ガススリットカメラ)の観測運用、応答関数の経年変化の校正を行い、無バイアスな全天X線監視データを用いて銀河系内のX線連星系の活動性と大規模構造の解析研究を行った。 GSCの運用、校正に関しては、2009年に軌道上で実験を始めてから2016年までの7年間で、12台のガスカウンターのうちの3台に炭素抵抗芯線の一部が切れる問題が発生し、1台でガス漏れと考えられるゲイン上昇が見られていた。 本研究年度は、昨年までに行った装置の診断データの解析結果に基づき、これらの損傷の影響を考慮した応答関数を再構築し、科学データ解析に利用できるようにした。 この成果は、理研で公開しているMAXIのデータアーカイブに取り込まれている。また、国際会議 IEEE Nuclear Science Symposium 2016で、この実験解析を報告した。 銀河系内のX線連星系の研究に関しては、GSCの7年間の運用で観測された全12個のBe星X線連星パルサーのアウトバーストのX線スペクトルと光度時間変化を解析し、Fermi/GBMの全天監視データから得られたパルス周期の変化率との相関関係から、降着円盤とパルサー磁気圏の相互作用モデル、及び中性子星パラメーターに対する制限を導き出した。現在、この結果を学術論文に投稿しており、審査待ちの状態にある。銀河系のX線放射の大規模分布に関しては、観測装置の問題に対処した解析プロセスの開発が必要になって遅れているが、応答関数の校正が完了し見通しが立てられた。
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