研究実績の概要 |
今年度は、1)NaおよびMg同位体の反応断面積の評価と1中性子ハロー核の解析 2) 荷電変化断面積に基づいた、不安定核の陽子半径の評価 を行った。 1)NaおよびMg同位体の反応断面積評価では、まずMg同位体の反応断面積の系統的評価を行った。その結果、以下の知見を得た。「核変形が大きくなることで、反応断面積が球形の形状から予想されるものよりも大きくなることを確認した」「魔法数N=20が消失し、大きな核変形が生ずる、いわゆる反転の島はN=19の系(31Mg)から始まっており、そのことは反応断面積の急激な増加となって現われる」「N=19系で始まるMg同位体の大きな変形はdrip-line核(40Mg)まで続いている。つまり、N>18のMg同位体は軒並み大きく変形している」「37Mgの反応断面積は、変形だけで説明できないほど際だって大きい。従って中性子ハローが形成されていると考えられる」。Na同位体に関しても反応断面積の計算を終え、論文出版準備中である。 2)荷電変化断面積と陽子分布の半径との関係を、Be, B, C, N, O同位体に対して調べた。Be, B同位体では、中性子数の増加に伴ってクラスターが形成され、結果として陽子半径が増加すること。この陽子半径の増加は、荷電変化断面積の増加として観測できる事を示した。これらの結果は既に論文として発表済みである。また同様の解析をC,N,O同位体に対して行い、論文出版準備中である
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今後の研究の推進方策 |
以下の2課題に取り組む a) 2中性子ハロー核を記述するための理論模型の開発 b) 不安定核の陽子半径の系統的解析 これまでの研究によって、1中性子ハロー核に対する研究手法はほぼ確立した。2中性子ハロー核の微視的記述を行うためには、数値計算のコストが膨大になるという問題を解決する必要がある。今後は、確率的変分法を採用することで、2中性子ハロー核を記述する方法を開発する。まず、6He等の質量数の小さな系を対象とし、プログラムの開発、ベンチマークテストを行う。その後、22C, 31Fなどより質量数の大きな2中性子ハロー核候補に対して研究を進める。 また、これまでBeからOまでの軽い不安定核に対して荷電変化断面積の解析による陽子半径の議論を行って来た。今後、より大きな陽子半径の変化が期待されるNe, Mg同位体に対して同様の研究を行う予定である。
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