研究課題/領域番号 |
25400241
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
加藤 幾芳 北海道大学, -, 名誉教授 (20109416)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 9Be 第1励起状態 / 元素合成反応 / 3体共鳴状態 / 仮想状態 / 光分解反応断面積 / 複素座標スケーリング法 |
研究実績の概要 |
元素の合成プロセスで重要なα+α+n→9Be+γ反応の断面積を逆反応から評価するため、光分解反応断面積を理論的に調べてきた。9Beの光分解反応断面積の幾つかの実験で、8Be+n閾値の直ぐ上に大きな値を持った鋭いピ-クが観測されているが、その値について実験の間で不一致が指摘されている。我々はα+α+n模型を用いて9Beの光分解反応断面積を再現し、8Be+n閾値の直ぐ上にピ-クを持つ理由を明らかにした。これまでの研究では、このピークが9Be の第1共鳴状態1/2+ によるものか、8Be+nの s-wave 仮想状態によるものか理解が分かれていた。今回の我々の研究において、複素座標スケーリング法を用いた3体共鳴状態の探索を行い、用いたスケーリング・パラメータの範囲では共鳴状態が得られず、幅の狭い共鳴状態が存在しないことを明らかにした。さらに、計算された9Beの光分解反応断面積が示す8Be+n閾値の直ぐ上のピ-クは8Be+nの s-wave 仮想状態による可能性が高いことが分かった。その研究結果は、複素座標スケーリング法を用いて3体連続状態に分解する遷移強度関数を計算する新たな方法によるものであり、国内での学会発表を始め、国際会議で報告を行い、最近、国際的学術雑誌 Phys. Rev. C に投稿された。 今年度行う予定であったカザフスタンとの国際協力による8Be+n の低エネルギー共鳴現象の研究は、カザフスタン側の事情により1年遅れることとなった。今年度(2015年度)、カザフスタンで計画されたカザフスタン・米国・ウクライナ・ハンガリー・日本の国際共同研究が認められ、8Be+nの課題もその中で行われることとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
「9Be核の3体分解反応を計算し、その反応断面積を求める」という主要課題は今年度ほぼ達成できた。そのことにより、評価は90%である。残った課題は、1)超低エネルギー8Be+n散乱における3体共鳴、2)9Beの低エネルギーのエネルギー準位とその構造、研究である。今年度、主に2)の課題を行う計画である。また、1)の課題は、カザフスタンとの共同研究で、カザフスタン側の国際プロジェクトが認められたことにより、今年度から2年間の予定で実行する。 今年度達成した課題についての評価であるが、得られた仮想状態による閾値近傍の断面積の増大は、低エネルギー中性子吸収による元素合成のメカニズムを理解する上で重要な役割を演ずるものと考えられ、この分野の研究の進展に大きな成果となる。また、原子核反応における仮想状態による断面積増大の初めての例であることが分かった。そこで、次に仮想状態形成メカニズム、特に、3体系におけるメカニズムの解明が新たな課題となった。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究は、当初計画で取り上げられた1)超低エネルギー8Be+n散乱における3体共鳴、2)9Beの低エネルギーのエネルギー準位とその構造、の研究と共にこれまでの研究から発生した新たな課題である 3)仮想状態形成メカニズム、特に、3体系でのメカニズムの解明、である。これらの課題を以下のようなスケジュールで進めて行く計画である: [平成27年度]「9Beの低エネルギーのエネルギー準位とその構造」を主要課題として研究を進める。共同研究者はモンゴル国立大学、研究員である M. Odsuren である。また、理化学研究所、特別研究員の菊池右馬、大阪工業大学准教授の明孝之とも議論しながら進める。研究打ち合わせのための旅費、研究成果発表のための旅費が主な研究費の使用目的である。カザフスタンのアル‐ファラビ国立大学のN. Takibayev教授との共同研究として、「超低エネルギー8Be+n散乱における3体共鳴」の研究を2年間に渡って行う。 [平成28年度]「超低エネルギー8Be+n散乱における3体共鳴」の研究を中心課題として、カザフスタンのアル‐ファラビ国立大学のN. Takibayev教授との共同で行う。また、「仮想状態形成メカニズム、特に、3体系でのメカニズムの解明」をモンゴル国立大学、研究員である M. Odsuren と協力して行う。研究費は主に研究打ち合わせのための旅費、研究成果発表のための旅費として使う計画である。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初、ノート型パソコンを購入予定であったが、希望する性能と現在使用中のパソコンの性能を考え、購入を次年度することにした。そのため、次年度使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
大容量メモリーと高計算速度のノート型パソコンを購入予定である。
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