超弦理論は重力を含む素粒子の統一理論の最も有望な候補である。しかし、この理論の基本的方程式あるいは作用は何かという問題はまだ完全に明らかになっていない。この問題に対する一つの有力なアプローチが超弦の場の理論である。これは、点粒子の場合と同じように、超弦を第二量子化した超弦の場の理論を構築することにより、超弦理論の非摂動的な定式化を得ようというアプローチである。 超弦の場の理論を構築しようという試みは長年なされてきたが、spurious singularityと呼ばれる問題によってうまくいかなかった。spurious singularityとは超弦の摂動論に現れる非物理的な発散である。超弦の場の理論はこの発散が現れないように作る必要があるのだが、これは非常に難しい。最近Sen等は、無限個の相互作用を持つような超弦の場の理論の定式化を考えるのであれば、spurious singularityが現れないような超弦の場の理論を作ることができることを示し た。しかし、このような定式化では超弦理論の非摂動効果を議論することは難しい。 本研究では、光円錐ゲージの超弦の場の理論を用いてspurious singularityの問題のない定式化を得るという方法を提案している。光円錐ゲージの超弦の場の理論において現れるspurious singularityはコンタクト項の発散と呼ばれるタイプのみであり、これらは次元正則化という方法を用いることによって処理することができる。 当該年度の成果は、光円錐ゲージの場の理論において、Ramond sectorの外線を取り扱う方法を完成させたことである。これにより、この理論を用いて超弦理論のダイナミクスを研究することが将来の課題である。
|