研究課題/領域番号 |
25400245
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
中田 仁 千葉大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (80221448)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 核準位密度 / 殻構造 / 集団運動 / 殻模型 / 量子モンテカルロ法 / スピン・軌道ポテンシャル / isotope shift |
研究実績の概要 |
1. 実験データを援用して殻模型モンテカルロ法の結果から基底状態エネルギーを引き出す方法を開発し,Nd-Sm領域核に応用することにより,この領域の球形核・変形核・遷移核にわたる一連の奇中性子核の状態密度を,偶中性子核と同じHamiltonianを用いて再現することに成功した. 2. Ni領域において,十分広い模型空間に対して実験データをよく再現しかつ殻模型モンテカルロ計算に適した有効相互作用パラメータを見出し,この領域の準位密度研究の準備を整えた. 3. 有限温度BCS理論と粒子数射影を組み合わせてNd-Sm領域の偶々核に応用し,振動状態による核準位密度のcollective enhancement factorの温度依存性を調べた.その結果,従来振動状態の影響は低温で速やかに消えると考えられてきたが,この理解は通常平均場近似に合わせて導入される粒子数非保存に強く依拠したもので,粒子数保存の成り立つ実際の系では,振動状態の影響がより高温まで残ると考えるべきことを示唆する結果を得た. 4. Pb核のisotope shiftに対する3体LS力の効果を調べ,20年来の問題であったPb核のisotope shiftのkinkが,中性子軌道の縮退を無理に仮定することなしに3体LS力により説明できることを示した.これにより,原子核の殻構造に本質的な役割を果たしているスピン・軌道ポテンシャルにおいて,3体力の影響が重要であることが明らかになった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
次の2点について,非常に重要な結果を得た.まず,核準位密度における集団運動の影響について,従来の理解を覆すことを意味する結果を得た(研究実績の概要3.).今後,より精確な数値計算を行う.また,3体LS力が原子核の殻構造に重要な寄与をもたらすことを明らかにし,Pb核のisotope shift問題をほぼ解決した(研究実績の概要4.).この知見は本課題の遂行にも重要な意味を持つ.これらは当初の研究計画を上回る成果である. また,Ni領域核の準位密度計算は海外の研究協力者との適切な役割分担が奏功して目処が立っており,Zr領域の計算準備も進行中である.Ca領域の計算が遅れ気味であるが,総合的に見て,平成25年度の若干の遅れを取り戻し,順調に研究が進んでいると言える.
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今後の研究の推進方策 |
次のような内容の研究を完成させ,その成果を発表する. ・Ni, Ca, Zr領域核の,殻模型モンテカルロ法による準位密度の計算. ・粒子数射影を用いた,振動運動が核準位密度にもたらす影響の研究. ・3体力起源のスピン・軌道ポテンシャルの影響を調べ,原子核の殻構造のより精確な理解を図る.
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次年度使用額が生じた理由 |
学内業務の都合により,予定していた成果発表のうち1つを断念したため.
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次年度使用額の使用計画 |
最終年度でもあるので,当該研究により得られた成果を,論文及び学会発表を中心として国内外で積極的に発表する.
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