研究課題/領域番号 |
25400246
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
松尾 泰 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 准教授 (50202320)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | M理論 / ブレーン / インスタントン / q変形代数 / 無限次元対称性 / Seiberg-Witten曲線 / 超対称性 |
研究実績の概要 |
本年度は、量子変形された無限次元代数(DIM代数と呼ばれる)を用いて超対称ゲージ理論とそれに関連するブレーンについての詳しい解析を行った。 DIM代数はトーラスの自己双対対称性を最初から持っており、ゲージ理論やM理論に現れるS双対性をうまく記述することが想定される。この代数の表現を数学的に構成して、超対称ゲージ理論のインスタントン分配関数(非摂動的補正として現れる位相的な寄与)を厳密な形で書き表すことに成功した。これらはある種の2次元系の相関関数として書かれているが、その具体的な構成法と代数による特徴づけを与え、これを用いて超対称ゲージ理論を特徴づけるSeiberg-Witten曲線とその量子化を具体的に与えた。代数の表現論を用いてSeiberg-Witten曲線が与えられたのは初めてであり、国際的にも大きな注目を集めた。 さらに、超対称ゲージ理論はM理論のブレーンの組み合わせにより書かれることが知られていたが、我々は代数を用いてこれらの組み合わせを具体的に記述できることを示した。特にゲージ群を複数枚のブレーンで構成し、いくつかのゲージ群をそれを束ねる別の種類のブレーンで書かれることが知られていたが、我々の構成法ではそれらをある意味で対等に取り扱うことに成功している。これはゲージ理論の持つ双対性が、代数の用いる双対性と同一視できることを意味している。弦理論やM理論の持つ双対性を無限次元代数の構造として表現したのは我々の研究が初めてである。 あと、以前から行っていた南部括弧のM理論への応用について詳しい解析を再開し、出発点としてレビュー論文を発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
もともとの目標であったM理論の双対性を含めた厳密な記述を無限次元対称性を用いてあからさまに表現することに成功した。特に、ゲージ理論を特徴づけるSeiberg-Witten曲線とその量子化について代数的に厳密な表現を与えた。M理論を理解するうえで本質的な前進であったと考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
昨年得られた結果を基礎にして代数構造の研究をさらに発展させてゲージ理論で発見されてきた双対性に関連する様々な発見を厳密な対称性の表現として書き表すことが目標となる。具体的には一般のゲージ群への拡張、関連する無限次元可解系の定式化、M理論のブレーン自体を記述する代数(楕円型代数と呼ばれる)などの研究が挙げられる。また、ここで得られた対称性は様々な物理的な応用が考えられるので、それらについて具体的な成果をあげたい。
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