最終年度ではM理論の双対性を代数的に実現しているDing-Iohara-Miki(DIM)代数のストリング・ゲージ理論や可解糖系模型への調べた。まず、DIMの3つの表現をつなげる粟田・Feigin・白石(AFS)演算子を用いて超対称ゲージ理論のインスタントン分配関数の情報を表現しているGaiotto状態やその一般化の具体的な表式を与えた。また、Nekrasovらが提案しているqq-characterの導出を、AFS演算子の性質を用いて導いた。また、ストリング理論でDブレーンを表している境界状態のDIM代数での表式を与えた。これにより時空にOrientifoldブレーンが存在している場合のストリング理論の記述が可能となり、対応するゲージ理論であるD型Quiverゲージ理論との対応を導いた。 また、可解統計模型とDIM代数の対応について研究を進めた。特にMaulik-Okounkov(MO)によって与えられていたVirasoro代数やW代数を持ちいたR行列の構成を量子変形した表式を与えた。MOのR行列は自由場理論から相互作用する可解模型への場の理論的な構成を与えているが、我々の仕事はその量子変形版を与えた。 期間全体としてはM理論の双対性についてDIM代数に到達しその性質を詳しく調べることにより、双対性を数学的に厳密に示すことができた。特に超対称ゲージ理論を幾何学的に表現しているSeiberg-Witten曲線(の量子版)を純粋に代数の表現論から導くことができたことは大きな進展であったと思う。また、ラグランジアンを用いたアプローチに関しても非可換Gerbeに基づいた幾何学的構成法に超対称性の導入に成功し、M理論の5次元ブレーンの定式化に対して有る一定の成果を上げることができた。
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