研究課題/領域番号 |
25400249
|
研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
淺賀 岳彦 新潟大学, 自然科学系, 准教授 (70419993)
|
研究分担者 |
中野 博章 新潟大学, 自然科学系, 准教授 (60262424)
谷本 盛光 新潟大学, 自然科学系, フェロー (90108366)
|
研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
|
キーワード | 素粒子理論 / 宇宙バリオン数の起源 / ニュートリノ質量の起源 |
研究実績の概要 |
今年度の研究成果の一つは、宇宙バリオン数の起源を説明する「軽い右巻きニュートリノ」が引き起こす、K中間子崩壊におけるレプトンユニバーサリティの破れについての研究である。ニュートリノ質量と宇宙バリオン数を説明しつつ、実験探索からの制限と宇宙元素合成からの制限を回避する「軽い右巻きニュートリノ」の引き起こす破れの大きさを定量的に評価し、実験探索感度と比較した。その結果、現在CERNやJ-PARCなどで行われている実験により、理論が予言する大きさの破れが検証され始めることを指摘した。本成果については、査読付論文、および国際会議の招待講演などで発表した。
また、今年度着手した研究課題として、「軽い右巻きニュートリノ」による宇宙バリオン数生成機構の新しい側面を研究している。特に、その相互作用が強く、宇宙熱浴中の反応が活発な状況下でのバリオン数生成機構の解明について検討している。このような状況では、これまで先行研究で行われてきた摂動論に基づく評価が難しく、数値計算による評価のみが可能であり、生成機構の本質を理解することが困難であった。我々は、このような状況下で解析的に生成量を評価する手法を見出した。現在、数値シミュレーションの結果との比較を実施している最中である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
宇宙バリオン数生成を実現する「軽い右巻きニュートリノ」による、K中間子崩壊におけるレプトンユニバーサリティの破れに関して論文発表ができたことは、研究の進展として良い評価が与えられる。また、「軽い右巻きニュートリノ」による宇宙バリオン数生成機構について、これまでにない新しい発見があった。このように、宇宙バリオン数生成に関する研究については、順調に研究が進んでいると評価できる。
また、CERNにおけるSPS加速器を用いたSHiP実験計画に沿った物理のレビュー論文の執筆に携わった。「軽い右巻きニュートリノ」によるニュートリノ質量生成機構、および宇宙バリオン数生成機構についての章を担当し、その結果はeprint-arxivに発表した。さらに、数多くの国際会議での招待講演により本研究の成果を発表できた点も、高く評価できる。
一方、「軽い右巻きニュートリノ」と宇宙暗黒物質に関する研究については、進展状況がやや遅れていると評価している。現在、宇宙暗黒物質となる「軽い右巻きニュートリノ」と宇宙バリオン数生成を実現する「軽い右巻きニュートリノ」を関連づけるフレーバー対称性に関する研究を進めているが、今年度成果を論文として発表することはできなかった。次年度には研究を加速させ、早期に論文発表できるよう取り組む。
|
今後の研究の推進方策 |
次年度に取り組む課題として第一に、相互作用が強い「軽い右巻きニュートリノ」による宇宙バリオン数生成機構の解明を行い、解析的な評価と数値シミュレーションの結果を比較し、生成機構の本質を見出すことに取り組む。
また、現在進行中の課題である、宇宙暗黒物質となる「軽い右巻きニュートリノ」と宇宙バリオン数生成を実現する「軽い右巻きニュートリノ」を関連づけるフレーバー対称性についても論文として成果を発表する。さらに、初期宇宙における暗黒物質生成量の定量的評価についても数値シミュレーションを実施する準備を進め、早期に結果が得られるよう研究を進める。
|
次年度使用額が生じた理由 |
共同研究を実施する際必要な研究打ち合わせの旅費を計上していたが、日程的な困難もありスカイプなどによる打ち合わせに変更したため、旅費の出費が抑えられた。
|
次年度使用額の使用計画 |
次年度については、渡邊篤史氏が新たに研究分担者として参加することになった。そこで、渡邊氏を新潟に招聘し直接研究打ち合わせを行い、研究の進展を加速させる。
|
備考 |
Review Paper (arXiv:1504.04855) "A facility to Search for Hidden Particles at the CERN SPS: the SHiP physics case", by S. Alekhin, W. Altmannshofer, T. Asaka et al (82 additional authors).
|