宇宙背景放射観測の進歩によって、数パーセントの観測精度に対応したインフレーションの理論的精密化が急務となっている。そのような状況のなか、申請者らは、数パーセントの非等方性を示すインフレーション( 非等方インフレーション)を発見した。本研究では、非等方インフレーションにおける揺らぎの統計的非ガウス性を評価し、非等方インフレーションモデルを宇宙背景放射観測衛星PLANCKの観測データによって検証することを目的としていた。
これまでに非ガウス性の計算を行い、Planckのデータと無矛盾である事を明らかにすることは成功した。今後は、非等方インフレーションの一般性に関する研究が重要となる。そこで今年度は、ベクトルに加えて反対称テンソル場が存在する場合の非等方インフレーションを研究し、ベクトル型と反対称テンソル型の混合型非等方インフレーションに関して厳密解を発見した。これに関しては、これまでに計算した非ガウス性の結果がそのまま適用できる。この解の安定性に関しても詳細に調べた。さらに、これまで調べてこなかったゲージ結合関数に関して数値計算を行い、短期的な非等方インフレーションが普遍的に起きる事を発見した。これにより、非等方インフレーションの普遍性を明らかにする事に成功した。また、この場合,MHz周波数帯の重力波の振幅が非常に大きなピークを持ち得ることを発見した。これは将来の重力波観測にとって大きな意味を持つ発見である。
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