研究実績の概要 |
平成29年度は、ユニタリー性U^†=U^{-1}を満たすUを用いてψ=U Q_B U^{-1}と表されるエルミート性が自明に保証された古典解を考え、それが表すブレイン枚数(位相不変量)、そして、その周りの揺らぎの解析を目指した。これまでの研究では、ユニタリーではないUを用い、エルミート性が直接的には成り立たない古典解を取り扱っていたが、これでは、様々なUの積に対応した古典解や、古典解周りの揺らぎのエルミート性が非自明になり、解析を難しくしていた。今回は、KBc-代数の要素(K,B,c)により、f=f(K)を用いてU=exp(f[B,c]f)と表される、ユニタリー性が自明に保証されたUを採用し、まず、ψ=U Q_B U^{-1}が表すブレイン枚数の解析を試みた。このUはSU(2)群と似た性質も持ち、比較的計算が簡潔になるという側面もある。位相不変量であるブレイン枚数Nの計算のために、f(K)の微小変形に対応したUの変化δUにより、δN=π^2∫(U Q_B U^{-1})^2(UδU^{-1}) と表される表式を用い、この右辺が積分の特異部分からのみ寄与がある事を利用した解析を行った。期待するところは、f(K)のK=0の特異性から非自明なNの値が出てくることである。残念ながら、副研究科長としての研究科の運営業務に多忙を極めたことと、様々な技術的問題を解決するために時間がかかったため、解析は完結していない。しかし、ユニタリー性が保証されたUにより構成される古典解を用いたCubic String Field Theory (CSFT)の研究は、CSFTの位相的側面を明らかにするためには重要なものである。
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