研究課題/領域番号 |
25400257
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
田中 実 大阪大学, 理学(系)研究科(研究院), 助教 (70273729)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | ニュートリノ / RENP / 対超放射 / 宇宙背景ニュートリノ |
研究実績の概要 |
原子・分子からの光子を伴うニュートリノ対放射(RENP)の観測によるニュートリノの未知の性質の解明に向けて,研究を行なった.RENPの実現にはマクロコヒーレント増幅機構が必須であるが,その実証のために対超放射(PSR)についての研究を進めた.PSRはマクロコヒーレント増幅機構の概念実証過程であり,同時にRENPに必要な初期状態を生成するための準備過程でもある.昨年度までの研究で,共同研究を行なっている岡山大学でのパラ水素の振動励起状態を用いたPSR実験に対応するように,ラマン過程による標的の初期コヒーレンスの生成過程のPSR理論を構築してきた.本年度は,この岡山大学でのPSR実験の実データと理論計算を比較することで,データ解析を行なった.その結果,実験と理論がある程度一致することを確認し,シミュレーションとの比較により初期コヒーレンスが6%程度であると見積った.この実験では15桁以上の信号の増幅を確認し,マクロコーヒーレンス増幅機構の実証に成功した.今後,初期コーヒーレンスをさらに高めていけば,より大きな増幅が期待される.また,RENPに過程に対する宇宙背景ニュートリノ(CNB)の影響についても研究を行なった.ビッグバン宇宙論と素粒子の標準模型から,約1.9KのCNBが予言され,その存在はパウリの排他律によりRENPで放出される光子のスペクトルに影響を与え得る.この影響について定量的に明らかにし,CNBの検出のみならず温度や化学ポテンシャルをRENPの観測により原理的に測定できることを示した.さらに,RENPの背景事象として重要な多光子マクロコヒーレン過程についての研究を行ない,その制御の基本原理について明らかにしつつある.これらの研究と平行して,ニュートリノに関連する課題として,レプトンフレーバーの破れ,右巻き荷電カレントついての研究も行なった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
関連する実験の進展に合せて研究の順序を入れえているが,RENPの実現に向けた全体としての研究の達成度はほぼ当初の予定通りであり,RENPの実現によって期待できる新たな発展についても理論的成果を得た.
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今後の研究の推進方策 |
現在行なわれているPSR実験の解析のために,引き続きPSRの理論的解析を進める.また,RENPの背景事象として最も重要と考えられる多光子マクロコヒーレント過程について研究を行ない,これを制御する方法について明らかにする.さらに,これまでに得られたマスター方程式についての知見を元に,RENPで必要となる対向トリガー入射による初期コヒーレンス形成について調べる.標的の状態ををPSRに適した状態とRENPに適した状態に制御する可能性についても引き続き調べる.
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次年度使用額が生じた理由 |
共同研究者との研究打合せの場所を研究の必要上所属大学(大阪大学)に変更したため、旅費が一部不要になった。
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次年度使用額の使用計画 |
研究の発展とともに関連分野についての知識の必要性が増しているので、当該分野の研究者との交流のための旅費および書籍の購入に使用する。
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