研究実績の概要 |
本年度は、研究の目的(B)有限温度・密度QCD相転移 に関して、T. Kovacs氏(Debrecen, Hungary)らおよび山本氏(島根大D2)と共同して、物理点でのNf=2+1 QCDの有限温度シミュレーションを格子サイズ56^3x4まで拡大して実行してバルクディラック固有値の相関を精密測定した。以前と比較して統計数を10倍程度向上させたことと合わせ、固有値ウィンドウを極めて小さく取ることと、次隣接固有値間隔・次々隣接固有値間隔等の統計を理論的モデル(qエルミート集団)と比較することが可能になり、有限温度の閉じ込め相転移=アンダーソン局在転移という物理的描像を検証した。この成果は日本物理学会年会にて発表された。
また国際会議LATTICE2015において、代表者が日本学術振興会特別研究員として行い高い評価と被引用数を受けた2001年の研究業績の手法をアップデートする、複素・実・擬実表現のクォークを任意種類含むダイナミカル格子QCDに対する個別ディラック固有値分布を導出する簡便な手法を開発して発表し、その内容にPoSに掲載した。
更に、5週間にわたりSimons Center for Geometry & Physics (Stony Brook, NY, USA)の長期研究プログラムに滞在費支給にて招待され、多くの先端的研究者と交流して研究情報を収集することができた。同所においては研究の目的(A), (B), およびランダム行列理論による非摂動的な超弦理論の構成に関する2回の招待講演を行い、補助金による研究成果を専門コミュニティに披露して高い評価を受けた。
|