研究課題/領域番号 |
25400260
|
研究機関 | 愛媛大学 |
研究代表者 |
宗 博人 愛媛大学, 理工学研究科(理学系), 教授 (20196992)
|
研究分担者 |
坂本 眞人 神戸大学, 理学研究科, 准教授 (30183817)
加藤 光裕 東京大学, 大学院総合文化研究科, 教授 (80185876)
|
研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2018-03-31
|
キーワード | 超対称性 / 格子場の理論 |
研究実績の概要 |
平成28年度での格子上の超対称性についての成果を述べる。 (1) 冪零(格子)超対称性(SUSY)の定義と選択:SUSY代数には、ある特徴的な部分代数が存在する。その生成子は必ず無限小並進の演算子を含んでいるが、代数的に完全に冪零であり、かつ互いに反可換な超電荷の部分的な集まりが存在する。それを冪零SUSYと呼ぶ。それは元のSUSYの部分代数になっている。この冪零性はコホモロジーという幾何学の手法が使える。 (2) 局所性と並進不変性とTILC算子群:出発となる作用は、Wess-Zumino型の超電荷を四つ持っている1次元量子力学系である。有効作用は各量子数において中性であること、また四つの超電荷のうちの二つの冪零超電荷で不変(冪零超対称性)であることを要請する。このとき、一般の場の並進不変で局所的な(TIL)演算子群を冪零SUSYのコホモロジーにて分類する。その結果、タイプI(二つの超電荷に関してコホモロジカルに自明)およびタイプII(一つの超電荷に関してコホモロジカルに非自明であり、他方の超電荷に関しては自明)に分類された。その結果、CLR型演算子という特殊な演算子以外には、タイプIIの演算子はないということが分かった。 (3) 有効作用のタイプII演算子の非繰り込み定理の証明:量子数が中性でコホモロジカル非自明な演算子はCLR型しかないので、可能な量子補正は制限される。その制限された量子補正からファインマン則のループ数は0しかないことが分かる。従って、有効作用の中のタイプ-II演算子(Wess-Zumino模型の質量項および相互作用項)には、量子補正が存在しないことが分かった。 (4) 上記の成果は国際会議SUSY2016において口頭発表し、また、専門紙「Progress of Theoretical and Experimental Physics」に論文として発表した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成27年度及び28年度の研究において1次元格子超対称性の十分な性質を持つ模型を構成できた。 具体的には、格子上で厳密に保存する複数の超電荷の構成と非繰り込み定理の証明である。 しかし当初の予定では、本年度では1次元の理解から高次元格子超対称性の理解が進んでいる予定であったが、高次元での予想外の障害が発現した。それは多変数複素解析の結果を組み合わせた最新の研究結果であり、それは2次元CLRの複素方向の局所解は存在しないことがわかったのである。しかし、本研究の目標としては深刻な障害であり、軌道修正が必要である。それへの具体的な対策は「今後の推進方策」で述べる。
|
今後の研究の推進方策 |
上述の「現在までの進捗状況」で述べたが、2次元Wess-Zumino模型の局所的な構築を考えたい。 冪零超対称性の超電荷はうまく見つけられたが、理論の対称性に不可欠な2次元版CLRがあり、それを満たす2次元差分の正則関数表示を考えるとその関数には零線(零点が複素一元的に伸びている)があり、その存在が2次元差分自体もその正則なはずの2次元円環領域で零となってしまうのである。現在CLRの高次元局所解を得るためもしくは、冪零超対称性を構築するために以下の方策を考えている。 1)zero curveの修正(連続極限の再考): 2)多成分による(虚数を使わない)定式化 : 3)高次元多成分による定式化 : 4)非自明の零因子の導入 : 5)新しい数学の道具を使う。 このために、最終年度であるが、当初の計画であった国際会議での成果報告よりも研究のより進化のために国内討議に時間をとる予定である。
|
次年度使用額が生じた理由 |
今年は共同研究者との研究打ち合わせ(国内旅費)及び国際会議発表(国外旅費)を行い、予定通りに順調に補助金を使用したが、昨年度の繰越があったため、その分次年度使用額が生じた。
|
次年度使用額の使用計画 |
次年度は最終年度であり、高次元CLR解の構成という難しい問題を残しているのが現状である。 積極的に情報を得るために、国内旅費を使用して国内研究者と会い、その障害の打開を図りたい。その研究成果報告を国内で行ないたい。
|