超電荷が4個ある超対称な連続模型においてそのうち2個を格子上で厳密に保存する複素超対称量子力学系の非繰り込み定理の証明した論文を2017年4月にpublishした。 (DOI:10.1093/ptep/ptx045)。これは、本研究テーマである格子理論に特有なライプニッツ則である巡回ライプニッツ則(CLR)を利用した大きな成果の一つである。その意義は二つある。まず一つは並進を含んだ超対称性の代数の部分代数である冪零の超電荷のみでこの定理の証明ができたこと。二つ目は有限の格子定数で連続理論と同じ性質を保てること。これら2つは従来の常識を超えた新しい発見である。 さらに二次元Wess-Zumino模型をCLRを使った定式化を試みたが、二つの冪零超対称性を保つために生じる二次元CLRの性質に、多変数複素正則関数の性質を加味するとある種のno-go定理が成立することが分かり、大きな障害にぶつかった。これは、複素正則関数の性質に一変数と多変数では大きな違いがある解析学上の問題と直結した問題である。この障害の状況は大変興味深いものなので、二次元の研究が落ちついた時期に発表するつもりである。 この現状(障害)を打破する為に、現在二つのアプローチを考えている。最初のアプローチは、回転対称性の破れを代償として、複数の冪零超対対称性の超電荷を格子上で保存できる枠組が予想される。二つ目のアプローチは、もともと超対称性を格子上で定式化する動機として非摂動効果の数値計算が目的であったので、すでに我々によって定式化された一次元超対称模型の数値計算を実行しつつ二次元への拡張性を探るものである。この両面で研究続行中である。
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