研究課題/領域番号 |
25400267
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 千葉工業大学 |
研究代表者 |
東山 幸司 千葉工業大学, 工学部, 准教授 (60433679)
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研究分担者 |
吉永 尚孝 埼玉大学, 理工学研究科, 教授 (00192427)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 原子核構造 / 二重ベータ崩壊 / 殻模型 / 核子対殻模型 / 中重核 / 電気双極子モーメント |
研究概要 |
ニュートリノを放出しない原子核の二重ベータ崩壊は,崩壊が起こり半減期が得られるとニュートリノの基本的性質が明らかになると同時に,素粒子の標準模型を超えた新しい物理への道を開くものとして期待されている。近年,二重ベータ崩壊の半減期の探索実験が盛んに行われているが,幾つかの核種に対して上限値が得られているに過ぎない。また理論においては,これまでの原子核理論研究では原子核殻模型,乱雑位相近似,相互作用するボソン模型等により核行列要素の計算が行われていたが,模型の違いにより互いの結果が一致していない状況であった。本研究では,質量数80領域,質量数130領域の原子核に対して,二重ベータ崩壊の核行列要素を計算した。これまでの先行研究に比べて精度の高い波動関数を用いた本研究の計算では,これまでの予言よりも小さい核行列要素の値が得られた。 また本研究では,殻模型により質量数130領域の偶偶核・奇核について数値解析を実行し,原子核の励起メカニズムを明らかにした。中重核の核子間にはたらく相互作用の研究は現在まであまり行われてこなかったため,本研究では現象論的な有効相互作用を用いて数値解析を行い,幅広い核種のエネルギー準位や電磁遷移の実験値を再現した。殻模型による計算結果を核子対殻模型により解析したところ,この領域に現れる偶偶核の低エネルギー状態は主に集団運動核子対で作られており,高スピン状態は高い角運動量の軌道にある中性子2個の整列の効果が大きいことを確認した。 その他の成果として,質量数130領域の原子核に対してパリティと時間反転対称性を破る相互作用により生じる電気双極子モーメントを計算している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では平成25年度において,殻模型により質量数130領域の偶偶核・奇核について殻模型による数値解析を実行するとともに,質量数80領域,質量数130領域の原子核に対してニュートリノポテンシャルを用いた核行列要素を計算する計画であったが,その目的をほぼ達成することができた。
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今後の研究の推進方策 |
これまでに行われてきた二重ベータ崩壊の核行列要素の理論の多くの研究では,奇奇核の中間状態は考慮されず計算が行われてきたが,本研究は奇奇核を再現できるように有効相互作用を決定している。そこで本研究では本年度において,中間状態を考慮した核行列要素の計算コードを開発する。これまでの研究では,中間状態の核行列要素に対する影響は非常に小さく,ニュートリノポテンシャルを用いた計算で十分であると考えられてきたが,本研究によりニュートリノポテンシャルの妥当性を示すことができる。また,他の領域の原子核構造の数値解析を実行し,その波動関数により核行列要素の計算を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
二重ベータ崩壊の核行列要素の計算には原子核の波動関数の精度が要求されるため,幅広い範囲にわたる原子核の実験値を再現するように有効相互作用を決める必要がある。これを遂行するためには高性能な計算機を用意する必要があったが,初年度予算では十分な性能の計算機を導入することはできず,購入を見送った。 相互作用を決定する際には,数千万回の計算を行わなければならず,また精度の良い波動関数を用意するためには大次元の行列を扱う必要がある。このため,次年度使用額は並列処理能力に優れ,また十分な記憶領域を持つ計算機の購入に充てる。
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