研究課題/領域番号 |
25400268
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
新田 宗土 慶應義塾大学, 商学部, 准教授 (60433736)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 位相的ソリトン / 渦 / インスタントン / 超対称ゲージ理論 / 高密度QCD / ボース・アインシュタイン凝縮・超伝導 / 非可換統計 / マヨラナ・フェルミオン |
研究概要 |
1.XY型のポテンシャルを持ったベービースカーム模型において、スカーミオンは2つの渦の分子構造になることを見出した。一方向をコンパクトした3次元空間において、コンパクト化方向に巻きついた場合のホッピオン(結び目ソリトン)は、内部自由度を任意の回数だけツイストしながらランプ・ストリングをコンパクト化方向に巻きつけることで得られることを見出した。変形したスカーム模型において、スカーミオンは球状のドメイン壁であることを示した。ドメイン壁に吸収されたスカーミオンは、ベービー・スカーミオンになることを示した(ドメイン壁スカーミオン)。 ヤン・ミルズ・インスタントンが、スカラー場に結合した理論で、円状のモノポール・ストリング、2次元球状の非アーベリアン渦、3次元球状のドメイン壁になることを示した。 2.高密度のQCDのクォーク物質における、ありとあらゆる位相的ソリトンを網羅し、特に非アーベリアン渦について詳しくレビュー論文としてまとめた。カイラル対称性の破れの際に現れる渦とドメイン壁の接合状態を調べた。非アーベリアン渦が格子を組んでいるときの、カラー磁性を提唱した。 3.非相対論的理論における南部ゴールドストーン(NG)モード、特にソリトンや渦があった場合に、2次の分散関係を持った、局在したNGモードが現れることを見出した。磁性体におけるドメイン壁には、U(1)の内部対称性の破れと、並進対称性の破れのモードが結合した2次分散のNGモードが現れることを発見した。2次元スカーミオン(らランプ)においては、2つの並進のモードが結合した2次分散のNGモードの他に、スケール変換のモードとU(1)の内部対称性のモードが結合した2次分散のNGモードが現れることを発見した。 4.大域的対称性のU(1)部分群をゲージ化した理論における非アーベリアン渦は、アハラノフ・ボーム効果を示すことを見出した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本研究課題のメインテーマは、ソリトンの統一的理解、高密度QCD、物性系への応用であった。研究実績の概要における1.は、ソリトンの統一的理解を大きく進めた。2.は高密度QCDにおける長大レビュー論文をまとめて、この分野に大きく貢献したと思う。3.の非相対論的理論におけるNGモードは、物性系に現れる様々なソリトンにおけるダイナミクスを明らかにしつつある。このように、各テーマにおいて、予想を遥かに超えた進展があり、理解が深まったと思う。
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今後の研究の推進方策 |
1.ソリトンの統一的理解について。これまで様々なソリトンの間の関係がわかってきたが、まだ統一的な数学的枠組みは見つかっていない。これを構築することが目標である。 2.高密度QCDのテーマ。クォーク物質(カラー超伝導)の渦のダイナミクスは詳しくわかってきたので、中性子星の物理に応用したい。また、もっと密度の低い核物質においては、中性子のp波超流動が実現されているので、この相における渦やソリトンのダイナミクスを解明して、中性子星の物理へ応用したい。 3.物性系への応用について。非相対論的な系におけるNGモードについては、内部対称性の破れに関しては一般的理解があるが、時空対称性については一般論がまだない。ソリトンがあると時空対称性が自発的に破れたNGモードが現れるので、この場合について一般論を構築したい。
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次年度の研究費の使用計画 |
海外出張旅費が予定よりかかってしまい、平成25年度分残額のみではまかえなかったため、平成26年度分に支出を回した。 海外旅費にあてる。
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