研究課題/領域番号 |
25400270
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 東海大学 |
研究代表者 |
ベンツ ヴォルフガング 東海大学, 理学部, 教授 (20168769)
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研究分担者 |
矢崎 紘一 独立行政法人理化学研究所, 仁科加速器研究センター 橋本数理物理学研究室, 研究員 (60012382)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | fragmentation functions / hadron form factors |
研究概要 |
平成25年度に行った研究実績は次の通りである: 1) クォークのダイハドロン破砕関数についての研究:高エネルギー散乱過程を記述する際、通常のクォーク破砕関数の他終状態に2個のハドロンが観測される場合を表す「クォークのダイハドロン破砕関数」が重要な役割を果たしている。本研究ではクォークの有効理論を使ってクォークが2個のパイオン、2個のケイオンおよびパイオンとケイオンの対へのダイハドロン破砕関数を求め、そのハドロン対の運動量およびエネルギーの依存性について調べた。モンテカルロ方法を利用し、中間状態のベクトル中間子および多重破砕過程の影響も取り入れ破砕関数を数値解析で求めた。ダイハドロン破砕関数が今後の加速器実験の測定対象となるので本研究結果が今後の発展に大きなインパクトを与えることになる。この研究がオーストラリアの Adelaide 大学との共同研究であり、研究成果が Physical Review D 88 (2013) 094022 に掲載され、国際会議のプロシーディングス EPJ Web of Conferences 66 (2014) 06014 にも報告されている。また平成25年度の研究報告として RIKEN Accelerator Progress Report 46 (2014) にも掲載される予定である。 2) ハドロンの形状因子についての研究: 高エネルギー弾性散乱過程においてハドロンの内部構造を表す関数として形状因子が重要な物理量である。アメリカの Argonne 国立研究所との共同研究でクォークの有効理論を使って核子および中間子の形状因子についての解析を行った。本研究では特に形状因子のフレーバー依存性につして研究し、数値解析の結果と実験データとの比較を行った。2014年1月に Argonne 国立研究所を訪問した際この研究の成果についての論文をまとめ、今年中に Physical Review D へ投稿する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
平成25年度の本研究対象となっているクォークの破砕関数について重要な結果を得ることができたので9月頃に論文をまとめ10月頃に Physical Review D へ投稿し11月頃に研究成果が掲載されたことが当初の計画以上に進展していると考えられる。それと同時にハドロンのクォーク内部構造を表している形状因子についての数値解析も進め現在は論文をまとめる段階まで行っていることも当初の計画以上の発展である。今年の1月頃アメリカの Argonne 国立研究所への外国出張が本研究の成功のため特に重要であった。引き続き今年の6月頃にオーストラリアの Adelaide 大学への外国出張を予定し、クォークの破砕関数についての研究を更に発展させるつもりである。また、平成25年度中に資料整理と研究補助のために謝金を有効的に利用したことも重要であった。平成26年度中に専門的知識提供のために引き続き謝金を利用する予定である。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究計画が次の通りである: 1) クォーク破砕関数およびターゲット破砕関数についての研究:先ずクォーク破砕関数の横運動量およびスピン依存性について研究したい。そのためにクォーク有効理論およびモンテカルロ方法を利用して Collins 破砕関数を求め実験データとの比較を行いたい。また、クォーク破砕プロセスの他に散乱の標的(核子および原子核)による破砕プロセス、すなわちターゲット破砕関数 (fracture function) についても研究したい。高エネルギー領域におけるクォーク破砕過程および中間エネルギー領域におけるターゲット破砕過程、両方を取り入れてハドロン生成過程について数値解析したい。その目的を達成するために、今後も共同研究のため外国出張、専門的知識提供(特に Q^2 発展方程式のために必要な繰り込み群の基礎論および応用)のため謝金の利用は大切である。 2)ハドロンの形状因子についての研究:平成25年度中にアメリカの Argonne 国立研究所との共同研究の継続として先ずハドロンの形状因子について得られた数値解析の結果を論文にまとめ、Physical Review へ投稿したい。今後の研究に特に形状因子のフレーバー依存性に注目したい。最近行われた実験データの解析によりクォークフレーバー毎にハドロンの形状因子への寄与について重要な情報が得られたので、クォーク有効理論の範囲内にそのフレーバー依存性につして理論解析を行いたい。
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次年度の研究費の使用計画 |
購入物品等が当初予算より廉価で購入できたので、残額は来年度の物品等に充当する。 金額 9,066 は平成26年度中に消耗品の購入(プリンターのカートリッジなど)に使用する予定である。
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