研究課題/領域番号 |
25400271
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
坂井 典佑 慶應義塾大学, 自然科学研究教育センター, 訪問教授 (80108448)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 素粒子論 / ソリトン / バイオン / 発散級数 / 局所化 / ゲージ場 / ドメーンウォール / 非線形シグマ模型 |
研究実績の概要 |
本年の目的のひとつは、ドメーン・ウォール上に局在したゲージ場の模型を構成し,さらにその有効相互作用を表す有効場の理論を求めることであった.この点で,ゲージ場の局在機構を昨年度までに提案でき,本年はその模型での低エネルギー場の非線形な有効作用を求めることに成功した.カイラルラグランジアンに現れる相互作用の形とよく似た結果が得られた. 一方,摂動級数の発散は場の量子論が定式化されてから数十年来の問題である.特に,QCDのような漸近的自由な場の理論では,リノマロンという問題が未解決のまま残っていた.近年,空間の一部をコンパクトにすることによって,分数量子数を持つ分数インスタントンの複合系として,バイオンという新しいソリトンが見つかった.このバイオンがリノマロンの問題を解決する可能性がある事が分かった.我々は,2次元のグラスマン模型と呼ばれる非線形シグマ模型で,バイオンを構成し,完全に分類することに成功した.グラスマン模型は一般にU(NC)ゲージ理論の強結合極限として得られる.一方,U(1)ゲージ理論(NC=1)の場合にはCPN模型となる.我々はCPN模型で荷電バイオンが存在しないことを初めて明らかにし,グラスマン模型では荷電バイオンが存在することを示し,具体的に構成することに成功した.これらのバイオンの内,中性のバイオンは,摂動論の発散級数に厳密な意味づけを与えるために重要な役割を果たし,摂動級数の発散の問題を解決する.一方,荷電バイオンは閉じ込めの問題にも知見を与える可能性がある.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
局在したゲージ場の模型で,物質場も含めた模型を構成し,その有効相互作用を求めることができた.これによって,ソリトン上の有効場理論の有用性を確立できた.また,ヒッグス相での磁気単極子の力学を定量的二階席できた.一方,摂動級数の発散は数十年来の問題であるが,空間の一部をコンパクトにすることによって,バイオンという新しいソリトンが見つかり,これが発散級数を厳密に意味づけることに役立つことが分かった.このバイオンを非線形シグマ模型の場合に,精密に定式化出来た.
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今後の研究の推進方策 |
今年度進展したバイオンの研究をさらに発展させ,高次の効果まで正しく得られることを示した.これによって,場の量子論の摂動論と非摂動効果との関連がより明確になると期待する. また,局所化の方法を用いて,超対称ゲージ理論の非摂動効果とソリトンの力学の理解を進展させる. さらに,非摂動効果の研究のもう一つの手がかりとして,弦理論から示唆されるAdS/CFTの方法を低次元模型でより具体的に検討したい.
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次年度使用額が生じた理由 |
研究会参加のために前倒し支払い請求した.しかし,他の予定と重なり,本年度3月にアメリカで開催された国際会議に参加することができなくなった.そのために前倒し請求分の一部が使用できなかった.来年度に使用する予定である.
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次年度使用額の使用計画 |
来年度9月に中国で開催される国際会議など国外または国内での研究集会に参加するために使用する予定.
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