研究実績の概要 |
25年度に引き続き、K3曲面上にコンパクト化された超弦理論に現れるマシュー群の対称性(マシュームーンシャイン)に関連する研究をおこなった。N=4超共形代数の指標はBPS表現はモックモジュラー形式であり、BPS表現はモジュラー形式でありこの2つが混じり合ってマシュー群の対称性を作っている.モックモジュラー形式は特異な変換性を持ちそのままではモジュラー形式にならないが、物理におけるregularizationにあたる項を付け加えると変換性が改善されてτ,τ*(複素共役)に依存する実ヤコビ形式になる。この理論は数年前に数学者(Zwegers)によって作られた. 本年度江口はZwegersの構成を詳しく調べ、モックモジュラー形式とそのregularizationの項がひとつにまとまって、ポアンカレ級数のような表式に表す事ができモジュラー不変性が露に読み取れる形で表記できる事を見いだした.この表式は今後の研究で役立つと期待される. 一般に非コンパクトなターゲット空間を持つ超弦理論は、理論に赤外発散を持つためそのままではモジュラー不変性が破れるが、このとき経路積分の評価から自然にregularizationの項が現れて最終的に理論のモジュラー不変性を回復する事が以前の研究(Troost,江口,菅原)で知られている.江口は経路積分の評価から今回発見したモックモジュラー形式とregularozationが融合した表式が自然に与られることを示した.
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