研究課題/領域番号 |
25400273
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研究機関 | 立教大学 |
研究代表者 |
江口 徹 立教大学, 理学(系)研究科(研究院), 特任教授 (20151970)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | string theory / N=4 SCA / BPS representation / Mathieu group / elliptic genus / moonshine phenomena / K3 surface |
研究実績の概要 |
江口は1980年代からN=4,N=2超共形代数の表現論を開発し,その結果をK3曲面やカラビヤウ多様体上にコンパクト化された超弦理論の応用する事を目指して来た。特に,BPS表現、非BPS表現の発見と、これらの表現の指標公式の導出はN=4,N=2表現論の最も基本的な結果である。特に,江口はBPS表現の指標がモジュラー変換の下で異常な振る舞いをする事に気がついたが、これはモックモジュラー形式と呼ばれるものが物理の文献に初めて現れた例に成っている。これらの表現論の結果は1989年に出版された論文に纏められている。またこの論文ではK3曲面の楕円種数を求めこれをN=4の表現の指標で展開する事を試みている。 この後、表現論を用いたstringのコンパクト化の研究はしばらく停滞した。この間、数学者によるモックモジュラー形式の研究に新しい展開があり,この発展にも刺激されて、2010年頃江口は再びK3の楕円種数のN=4指標への展開を詳しく調べ、その展開係数がマシュー群M24の規約表現の次元の和で書ける事を発見した。この現象は有名なmonstrous moonshine(モンストラスムーンシャイン)に似ている事から、Mathieu moonshine(マシュームーンシャイン)と呼ばれるようになり多くの研究者の興味を集めるようになった。 現在ではマシュームーンシャインを拡張したウンブラルムーンシャインなど何種類かの新しいムーンシャイン現象が発見されており、活発な研究が行われている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
江口はモンスタラスムーンシャインで用いられるマッカイトンプソン級数に相当する級数を求め、K3楕円種数のM24の表現への分解が非常に高い次数まで成り立つ事を示した。この結果は数学者によって拡張され、分解が任意の次数で成立することが証明された。また、K3の楕円種数以外にムーンシャイン現象を示す例がないか詳しい研究が行われウンブラルムーンシャインと呼ばれる新しい系列などが発見された。ウンブラルムーンシャインはニーマイヤー格子と呼ばれる24次元の自己双対格子と関係していることが知られているがその機構についてはまだ明らかになっていない。
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今後の研究の推進方策 |
江口は最近、N=4リュービル理論を調べこの理論が持つ双対性をウンブラルムーンシャインの分析に応用できないかを調べている。ウンブラルムーンシャインは高い次元の多様体にstring理論がコンパクト化された状況と考えられているがその双対を取ると、K3と同じ複素2次元の多様体上にコンパクト化されたstring理論にマップできる。ニーマイヤー格子との関係はまだ不明であるが双対性を用いることによって新しい理解が得られることが期待される。
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次年度使用額が生じた理由 |
外国出張において、招聘先が航空旅費や滞在費を支出してくれた場合があったため 出張経費が予測より少なくなった。
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次年度使用額の使用計画 |
自分の出張、外国人研究者の招聘に使用する。
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