研究課題/領域番号 |
25400275
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
鷹野 正利 早稲田大学, 理工学術院, 教授 (00257198)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 核物質状態方程式 / 超新星爆発 / 変分法 |
研究実績の概要 |
クラスター変分法を用いた超新星爆発計算用核物質状態方程式作成の研究では、状態方程式テーブルを完成させた。Shenらの状態方程式と比較すると、陽子混在度が小さい領域で、非一様相から一様相へ相転移する臨界密度が、Shenらの状態方程式の場合より高くなった。また液相気相相転移の臨界温度が陽子混在度と共に減少する際、その割合がShenらの状態方程式の場合より小さくなった。さらに陽子混在度が小さい場合で非一様相に現れる原子核の質量数および陽子数が共にShenらの状態方程式の場合より大きくなった。これらの結果の主な原因は、一様核物質の状態方程式において、本研究の場合の対称エネルギーの密度勾配項Lの大きさが、Shenらの状態方程式の場合より小さいことにある。 エネルギー汎関数を用いた変分法の拡張の研究では、まず昨年度に引き続き2体核力として中心力、テンソル力だけでなくスピン・軌道力までを含んだ場合のエネルギー汎関数の整備を行った。また2体核力は中心力とテンソル力までしか考慮しないが、3体核力としてUIXポテンシャルの斥力項だけでなく2π交換項を取り入れる研究を推進した。具体的には中性子物質に対して、2体核力をAV6'ポテンシャルとし、全エネルギーを最小化する変分計算を行うと、低密度では2π交換項のエネルギー寄与が正であるのに対して高密度では負に転ずること、それに対応してスピン依存の構造関数が密度の上昇と共に高いピークを持つようになることが分かった。この傾向はFermi Hypernetted Chain(FHNC)変分法で予想されており、π中間子凝縮相の前兆と考えられる。ただしFHNC計算ではπ中間子凝縮相への1次相転移が予想されているのに対し、我々の計算結果では1次相転移のような不連続性は見られなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
昨年度までの遅れの影響で現段階でも若干遅れているが、エネルギー汎関数を用いた変分法の研究において、絶対零度のエネルギー汎関数の構築はその根幹となるので、慎重に研究を進めている。
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今後の研究の推進方策 |
エネルギー汎関数を用いた変分法による核物質状態方程式の研究では、基本方針は変更せず、現実的な核力に基づく絶対零度の中性子物質および対称核物質を取り扱うことを最優先とする。平行して有限温度核物質に対する変分計算の構築も進める。その後の天体現象への応用に際し必要となる非対称核物質状態方程式については、第一原理計算以外の方法で整備する可能性も引き続き検討する。
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