研究課題/領域番号 |
25400278
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研究機関 | 大阪電気通信大学 |
研究代表者 |
原田 融 大阪電気通信大学, 工学部, 教授 (70238187)
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研究分担者 |
平林 義治 北海道大学, 情報基盤センター, 准教授 (60271714)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | ハイパー核 / ストレンジネス / スペクトル / 核反応 / チャネル結合 / 連続状態 / 共鳴状態 / 理論核物理 |
研究実績の概要 |
大強度陽子加速器施設(J-PARC)において展開されるハイパー核物理において, (K-,pi±), (pi±,K+)や(K-,K+)反応で生成されるハイパー核の構造と反応機構を理論的に解明するとともに、核物質中におけるΣやΞなどのハイペロンの役割を明らかにすることが必要である。特にハイペロンを含む3体力は重要な役割を果たすと考えられる。平成26年度の研究成果は以下の通りである。 1.s殻ハイパー核の束縛エネルギーを再現するハイペロン-核子間の有効相互作用に基づいてΣハイパー核の3体系ΣNNに準束縛状態が存在することを示した。また3He(K-,pi+)反応のスペクトルは芯核である2核子系の励起による干渉効果のために準束縛状態のピークが打ち消され、実験データを矛盾なく説明できることが分かった。 2.連続状態離散化チャネル結合(CDCC)法を用いてハイパー核の連続状態を含む生成スペクトルの計算が可能になった。3Heを標的核にした(K-,pi-)反応によるΛpp連続状態の生成スペクトルを求め、実験データをよく再現することを示した。 3.4ΣHeのp波共鳴状態の存在を初めて予言し、J-PARC実験による4He(K-,pi-)生成スペクトルからΣN相互作用の情報が得られることを示した。さらに多重リーマン面上の極の振る舞いを分析して、生成スペクトルへの影響を調べた。 4.殻模型の1粒子波動関数を用いて、6Liを標的核にした(pi-,K+)反応のスペクトルの理論計算を行い、J-PARC E10実験のΣ生成領域のスペクトルを解析した。Σ核間ポテンシャルが斥力的であることが確認されたが、Λ連続領域のスペクトルの形を十分に再現できないことが分かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
大強度陽子加速器施設(J-PARC)において展開される(K-,pi±),(pi±,K+)や(K-,K+)反応で生成されるハイパー核の構造と反応機構を理論的に解明することが目的である。平成26年度は3つの論文として(a)ΣNNの束縛状態の存在を予言した論文、(b)CDCC法を用い3He(K-,pi-)Λpp 連続状態の生成スペクトルを適用した論文、(c)Σ4HeにP波の共鳴状態の存在する可能性を予言した論文を学術雑誌から出版した。この成果に基づき、p殻核を標的核にした生成スペクトルの計算を進めている。計算コードの開発がやや遅れ気味であるが、全体としてはおおむね順調に進んでいると判断している。
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今後の研究の推進方策 |
6Liを標的核にした(pi-,K+)反応の理論解析では、Λ連続領域のスペクトルの形を十分に再現できないことが分かった。平成27年度は、より詳細な6Li= d +αのクラスター模型やCDCCによる連続状態などの微視的な模型によるJ-PARC E10実験などの解析を進める。歪曲波インパルス近似による「多配位チャネルに拡張されたグリーン関数」を活用し,6Liなどp殻核を標的にした(pi-,K+)反応による中性子過剰ハイパー核の生成・崩壊スペクトルと生成断面積の理論計算を行い、ΣN-ΛN相互作用の性質を定量的に解明していく。最終年度にあたるため,本研究課題の成果と到達点を取りまとめ,次への課題と問題点を整理する。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成26年度は当初計画していた研究交流による海外渡航および研究分担者との共同研究が、ともに先方のスケジュールの都合により実施できず、旅費としての支出がなされなかったため。
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次年度使用額の使用計画 |
共同研究および研究成果報告のための国際会議等の参加を着実に実施するために、平成27年度の研究実施のスケジュールを早期に確定し、そのための旅費として支出する。また効果的なプレゼンテーションを行うための情報機器の購入にあてる。
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