研究実績の概要 |
大強度陽子加速器施設(J-PARC)において展開されるハイパー核物理において, (K-,pi±), (pi±,K+)や(K-,K+)反応で生成されるハイパー核の構造と反応機構を理論的に解明するとともに, 核物質中におけるΣやΞなどのハイペロンの役割を明らかにすることが目的である。 1.多重リップマン-シュウィンガー方程式を解くことにより, 多重チャネル2体系の複素ポテンシャルによる多重リーマン面に存在するS行列の極(pole)や影極(shadow pole)の振る舞いを調べ,物理的に観測される状態について極の性質について明らかにした。 2.最近の精密な実験データを含めて再現するように調整したpi-p->Σ-K+反応の素過程の振幅を「最適フェルミ平均の方法」を用いて求め, スペクトルの角分布のエネルギー依存性が原子核を標的にした実験データを説明することを示した。 3.殻模型の1粒子波動関数を用いて, 6Liを標的核にした(pi-,K+)反応のスペクトルの理論計算を行い, J-PARC E10実験のΣ生成領域のスペクトルを解析し, シグマ核間ポテンシャルに斥力が存在することを示した。 4.より詳細なクラスター模型や離散化連続チャネル結合法(CDCC法)による連続状態など微視的な模型による解析を進めるために,微視的模型に基づく「多配位チャネルに拡張されたグリーン関数」を活用したハイパー核の生成・崩壊スペクトルの数値計算コードの開発を進めた。
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