研究課題
基盤研究(C)
本研究は主として輻射流体シミュレーションを用いて初代星の質量に迫ることを主眼とする。まず当初予定していたように、ある典型的な初期条件から初代星形成のシミュレーションを行い、その結果を論文として発表し、アメリカ天文学会誌に掲載された(Susa 2013)。この研究は国際的にも高く評価され、これまで20件引用されている(NASA ADS調べ)。これに続いて宇宙論的な初期条件から現実的な初代星形成の輻射流体シミュレーションを行った。連携研究者の長谷川氏がまず宇宙論的なシミュレーションを行い、そこから60個の初代星のホストとなるミニハローを選び出した。それらのミニハローを初期条件として研究代表者が輻射流体計算を用いて初代星形成をシミュレートし、初代星の初期質量関数を得た。その結果、初期質量関数のピークが数十太陽質量の付近にあること、しかし最も大質量のものは300太陽質量になることがわかった。我々は更に、この初期質量関数にしたがって星が生まれその中で元素が合成されたとした時のアバンダンスのパターンを計算した。その結果、Pair Instability Supernovaの痕跡が強く残ることがわかった。これは100太陽質量以上の大質量の星が質量にして全体の約1/3に達するのが理由と思われる。この結果はすでに論文としてまとめられ、国際会議で発表され、査読付き専門誌に投稿中である。この研究と並行して、化石初代星の数を見積もる研究を行っている。修士学生が矮小銀河中に存在する初代星の分布および数を見積もったが、これを天の川銀河に拡張する為に現在計算を遂行中である。
2: おおむね順調に進展している
化石初代星の観測可能性に関しては現在計算中であり少し計画からおくれているが、主目的である最初の宇宙論的計算はすでに実行され、予定通り論文は投稿されているので、概ね順調であるといえる。
今後はまず化石初代星の観測可能性の研究を完成させ、予定通り高解像度で電離を取り扱える計算コードの開発を始める。
論文投稿が見込みより早ければ投稿料に使う予定であったが、まだ掲載決定になっておらず、次年度に持ち越した。現在論文投稿中であり、掲載決定になり次第支払いを行う。
すべて 2014 2013
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (3件)
The Astrophysical Journal
巻: 782 ページ: article id. 108
10.1088/0004-637X/782/2/108
巻: 773 ページ: article id. 185
10.1088/0004-637X/773/2/185