研究課題/領域番号 |
25400281
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 熊本高等専門学校 |
研究代表者 |
藤本 信一郎 熊本高等専門学校, 制御情報システム工学科, 准教授 (10342586)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 超新星爆発 / 元素合成 / 恒星進化 / 核反応 |
研究概要 |
重力崩壊型超新星爆発の理論的な理解が進みつつあるが、多次元効果を考慮しても、未だ観測値と同程度の爆発エネルギーを持つ超新星爆発をシミュレーションで再現するには至ってない。研究発表【雑誌論文】の論文[1]において、核反応および核反応熱の効果を組み込んだ多次元流体力学コードを作成した。このコードを用いて超新星爆発時の衝撃波伝搬の際の核反応熱の影響を議論した。爆発エネルギーへの核反応熱の影響はニュートリノ加熱効果と同程度かそれ以上であることを示した。ただし核反応熱の多くは再結合熱に起因し、核燃焼の効果は比較的小さいことも分かった。 また重力崩壊型超新星爆発においては、ニュートリノ加熱による多次元効果を考慮しても(極端なジェット状爆発を仮定しない限り)、超新星SN1987Aや超新星残骸CasAの観測値より1桁程度少ないTi44原子核しか生成・放出されない。研究発表【学会発表】の発表[2]において、Ti44原子核放出量の恒星回転および核反応率への依存性を議論した。調査した大質量星(15倍太陽質量、太陽金属量)に対しては、回転の効果により、Ti44原子核放出量は2,3倍増加する。さらに実験と理論に基づいて導かれた核反応率の不定性を考慮すると、Ti44放出量は5倍以上増加することが分かった。 金、銀、ウランなどのr過程元素の起源天体は未だ明確ではない。研究発表【雑誌論文】の論文[3]および研究発表【学会発表】の発表[5]において、高速回転する特異な超新星における磁気駆動ジェット状爆発の際のr過程元素を調査した。重力崩壊前の恒星磁場が非常に大きいか、ブラックホールへの重力崩壊するような大質量星で充分に回転している場合、太陽系組成と似た(質量数・原子番号)分布を持つr過程元素を放出できることを示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究実績の概要で示した通り、研究目的として挙げている超新星爆発への核反応熱の影響の調査は、限定的な状況のみではあるが、行うことができた。またTi44放出量への核反応熱の影響も発表はしてないが、調査は進めており、平成26年中にこれまでの結果をまとめて、発表できる状況である。 核反応を考慮した多次元流体力学コードは完成し、爆発現象に対しては研究成果を上げることができた。ただ恒星進化最終段階の長期間に亘る進化計算を行うのに必須の流体力学コードの並列化が遅れており、恒星進化最終段階での非球対象効果を調査するには至っていない。このような状況であるので、現在までの達成度をこのように自己評価した。
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今後の研究の推進方策 |
今年発表された超新星残骸CasAのガンマ線観測から見積もられたTi44質量と分布は超新星爆発の研究に非常に重要な成果である。観測は、極端なジェット状爆発を仮定しないと理論モデルでの再現が困難なTi44原子核の放出量(太陽の1万分の1程度の質量)を示す。しかしながらTi44、鉄、シリコンの分布はジェット状爆発のそれとは一致しない。ニュートリノ駆動超新星爆発では、回転や核反応熱を考慮すれば、核反応率の不定性の範囲内で、観測されたTi44質量と分布を再現できる可能性があり、今年度はこの研究に取り組む。 これと並行し、昨年度から引き続き、核反応を考慮した多次元流体力学コードの並列化に取り組み、開発されたコードを用いて、恒星進化最終段階の多次元流体力学シミュレーションを実行する。
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次年度の研究費の使用計画 |
【現在までの達成度】で述べたとおり、核反応を考慮した多次元流体力学コードの並列化の進捗状況が芳しくなく、恒星進化の多次元の大規模計算に至っていない。そのため今年度購入予定であったワークステーションの購入を見送った。併せて、ワークステーションで利用するCPUやメモリの性能向上とそれに伴う価格下落を考慮すると、平成26年度に購入した方がより高性能のワークステーションをより低価格で購入できる、という点も未購入の理由である。 平成25年度に未購入だったワークステーションを購入する予定である。
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