本課題の主要な研究成果は以下の3つである;(1)多次元効果を考慮した重力崩壊型超新星爆発における元素合成の解明、(2)超新星爆発および元素合成への核反応熱の影響の解明、(3)超新星爆発における元素合成に重要な核反応の解明、である。 まず成果(1)では、様々な質量の恒星に対して、非球対称超新星爆発の2次元爆発計算およびその結果に基づく放出ガス中の元素合成計算を行い、放出ガスの元素組成およびその質量を見積もった。その結果をSN1987Aや超新星残骸CasAの観測量と比較した。最終年度には、研究発表【学会発表】[1-3]において、重力崩壊から300-400ミリ秒以内で超新星爆発が起こる場合にモデルの結果と観測の結果が一致することを示した。また2次元計算における仮定(軸対称性)の上記結果への影響を調査するために3次元流体コードを開発し、超新星爆発の3次元計算を行った。今後はこの3次元爆発計算に基づいて、元素合成計算を行う予定である。 次に成果(2)では、核反応および核反応熱の効果を組み込んだ多次元流体力学コードを作成した。このコードを用いて超新星爆発への核反応熱の影響を議論した。爆発エネルギーへの核反応熱の影響はニュートリノ加熱効果と同程度かそれ以上であることを示した。ただし核反応熱中の多くは核子の再結合熱に起因し、核燃焼の効果は爆発および元素合成に対して比較的小さいことも分かった。 さらに成果(3)では、超新星爆発の際の元素生成量の核反応率依存性に着目した。定型的な反応率を用いた場合、Ti44の放出量は親星に依らず、SN1987AやCas Aの観測値より小さいが、反応率の実験的不定性の範囲内で上記の観測を再現する親星が存在することを示した。さらにCr・Mn合成に重要な反応を特定し、これらの反応率を、超新星残骸でのCr・Mn比の観測値から制限可能であることを示した。
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