研究概要 |
平成25年度は、格子上で良いカイラル対称性を持つドメインウォール・フェルミオン作用を用いたSU(2)ゲージ理論の研究を進めた。基本表現のフェルミオンを動的に含むシミュレーションをフレイバー数2,4,6,8に対して行い、閉じ込めとカイラル対称性の破れのフェルミオン質量に対する依存性を調べた。その結果、フレイバー数2,4については質量ゼロへの外挿でも閉じ込め的振る舞いであるが、フレイバー数6,8の場合は格子定数の質量依存性が大きく、詳細な解析が必要であることがわかり、引き続き研究を進めている。 動的シミュレーションは計算コストが大きく高速化が不可欠のため、コードの超並列計算環境でのチューニングを行った。本研究ではKEKのシステムを中心に用いており、IBM Blue Gene/Q, Hitachi SR16000 に対する最適化を行い、特にスレッド並列化によって計算性能の向上が得られた。引き続き性能向上を行なっており、また開発したコードは格子QCD共通コード開発プロジェクトBridge++の一部として公開準備を進めている。 有限温度での相転移現象、随伴表現のフェルミオンについての準備的研究を進めた。格子上で厳密なカイラル対称性を持つオーバーラップフェルミオンを用いた研究についても、固有値モードの解析を進めている。ドメインウォール作用は5次元の定式化であり、5次元方向無限大の極限ではオーバーラップ演算子に等しくなるが、その際どのように近づいてゆくかを固有モードの相関を通して理解する研究を進めている。 これらの結果について国際会議及び国内の会議で報告し、プロシーディング1篇として公表した。また関連の深い共通コードBridge++の開発に関してプロシーディング1篇が公表された。
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