ストレンジネス核物理において、K中間子原子核(反K中間子が束縛した原子核)はホットなトピックである。ストレンジネスをもつ反K中間子(Kbar)と核子(N)との間には強い引力が働く。そのためK中間子原子核では、中性子星内部に匹敵する高密度状態が生成される可能性がある。K中間子原子核の性質を明らかにするため、最も基本的な系であるK-pp(二つの陽子とK-中間子からなる三体系)を丁寧に調べている。 このK-ppは本来KbarNN-πΣN-πΛNといった結合チャネル系であり、かつ共鳴状態として存在する。結合チャネル系と共鳴状態という二点を同時に扱える結合チャネル複素スケーリング法(ccCSM)を用い研究を進めている。前年度までに、複素スケーリング法のユニークな性質を利用することで、共鳴状態としての性質を損わず効率的にKbarNNシングルチャネル問題として扱う方法を確立し、K-ppの性質を調べてきた。 平成28年度半ば本来の目的通り、陽に結合チャネルを取り扱う方法を完成させた。つまり先に述べたようにK-ppをまさにKbarNN-πΣN-πΛNという結合チャネル系として取扱い、複素スケーリング法によりその共鳴位置を求める、「完全な結合チャネル複素スケーリング法(Full ccCSM)」が完成した。まずは使用しやすいエネルギー非依存の現象論的KbarN相互作用を用い、その相互作用の元でのK-pp共鳴位置を明確に決定した。またこの研究によって、K-ppの完全な解を得たことになる。そこで前年度までの結果と比較することで、有効ポテンシャルの構築法について新たな知見を得ることが出来た。これは有益な副産物であった。 これらの成果をハドロン物理の国際会議(MENU2016)、日本物理学会のシンポジウム等、多くの研究会で報告した。更に原著論文としてまとめ、PRCに投稿し現在査読中である。
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