研究課題/領域番号 |
25400288
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研究機関 | 独立行政法人理化学研究所 |
研究代表者 |
船木 靖郎 独立行政法人理化学研究所, 仁科加速器研究センター, 協力研究員 (00435679)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 原子核クラスター / アルファ凝縮 / トリプルアルファ反応 / ハイパー核 |
研究実績の概要 |
1. 拡張されたTHSR波動関数を用いた12Cの研究 (1) 昨年度導入した、拡張型THSR波動関数に核半径拘束法を用いて12Cの共鳴状態に適用した。核半径拘束法とは束縛状態近似の範囲内で共鳴状態と連続状態の境界条件を近似的に取り扱う方法で、我々が2005年に開発したものであるが、今年度それをより一般化した形で用いた。実験で観測されているホイル状態の回転バンドを再現し、通常の回転バンドとは違う特異性が存在するとともに、その特異性が、ホイル状態の上にα+12C(Hoyle)のhigher nodal bandを生成させていること、を明らかにした。 (2) 拡張型THSR波動関数を12Cの基底状態に適用した。この波動関数はクラスターの``container’’描像に基づき従来のTHSR波動関数を一般化したものである。3αRGM/GCMによるフル計算の解が単一拡張型THSR波動関数で表されることを示した。これは昨年度20Ne、3α、4α直線鎖状態で明らかにした``container’’描像が12Cの基底状態でもほぼ完全に成り立っていることを示すものである。 2. 9Beにおけるα+α+nクラスターの``container’’構造の研究 中性子過剰核においてクラスターの``container’’描像が成り立っているか調べるため、今年度はまず9BeにおいてTHSR波動関数を用いた構造研究を行った。従来のTHSR波動関数にパリティを破る項を取り入れ、基底状態に対して、α+α+nのBrink-GCM波動関数がTHSR波動関数とほぼ一致することを示した。これは中性子過剰核におけるクラスター構造についても、クラスターの非局在化がクラスター構造の基本的概念であることを示唆するものである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
今年度特に、核半径拘束法という共鳴状態を取り扱う方法を、より発展させた形で用いることの有効性を示した。さらにその方法を12Cに適用することで、ホイル状態の上にある、ごく最近実験で観測された励起状態の性質を明らかにしたことは、当初の計画では全く予想していなかった研究成果である。
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今後の研究の推進方策 |
1. 拡張されたTHSR波動関数を用いた12C、16Oの研究。今年度12Cに適用した拡張型THSR波動関数を16Oに適用する。これは12C+α、4α構造を微視的に、かつ``container’’描像に基づき統一的に取り扱う、従来のTHSR波動関数を用いた方法を大きく凌駕する取り扱いである。 2. Λハイパー核におけるTHSR波動関数を用いた研究。Λハイパー核に適用した、Hyper-THSR波動関数を拡張し、Λ粒子をS波に限定しない取り扱いを行う。変形したΛ粒子軌道を導入し角運動量射影する方法であり、クラスターの``container’’構造に基づいた方法である。 3. 星の中での熱的α粒子捕獲反応の研究。低温下での12C合成反応率はCDCC計算に限らずHyperspherical Harmonics+R行列等を用いた他の研究グループもそれぞれ異なる計算結果を提出している段階である。来年度はHyperspherical Harmonicsを我々の虚時間発展法と結合させ、問題点を明らかにし最終的に議論を収束させることを目指す。 4. 中性子過剰核におけるクラスターの``container’’構造の研究。今年度は9Beについてクラスターの非局在化が本質的であることを示したが、10Be、12Be、についても同様に調べる。
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次年度使用額が生じた理由 |
海外旅費使用の際の航空券代金が予約時期により多少前後するため、当初予定より余剰分が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
海外旅費使用の際の航空券代金に使用する。
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