研究課題
本研究では、窒化物半導体のうち、近年様々な電子デバイス材料として実用が進んでいるAlGaN半導体を用いて、素粒子物理学実験分野、特に、液体アルゴン三次元飛跡測定器で重要な役割を担う高感度・高速応答真空紫外光検出器の開発を目指した。前年度から引き続き、GaN/AlGaN基板をベースとしたショットキー型フォトダイオードを作製し電気特性および特に紫外領域における分光感度特性を評価した。中でも、今年度は、暗電流低減、耐圧性向上を念頭に、SiC上にエピしたAlGaN基板材料を基に、プロセス条件の最適化を図りながら、フォトダイオード素子の開発を行った。その結果、従来の素子に比べて、暗電流が数100分の1程度以下に抑制された素子の作製に成功した。また、作製したフォトダイオードは、波長300nm以下の紫外光に対して、従来のものに比べて2倍以上の感度を有することを示した(>50mA/W)。一方で、今年度は、光電流出力増大のため、アバランシェ型ダイオードの開発について集中的に検討した。アバランシェ増幅の生起には数10V以上の耐圧性能が求められるが、現在までのところ約15-20V程度にとどまっている。一方で、これまでいくつかの基板条件で試作したダイオ-ドの系統的な特性評価から、耐圧性向上の具体的方策が明らかになったことから(例えば、低抵抗バルクGaN基板上への半絶縁AlGaN層の成膜といったエピ基板構造改良など)、高感度紫外光フォトダイオードの実用化がきわめて現実的なものとなった。以上の結果を含め、3年間の研究により新しい真空紫外光検出器として、窒化物フォトダイオードの可能性を示すことができた。本研究の成果により、液体アルゴン飛跡測定器など、素粒子実験分野で用いられる測定器での新しい紫外光検出技術の基礎が築かれた。
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