精密エネルギー較正のための線源懸架システムの開発を行った.線源懸架システムは,カムランド・太陽ニュートリノ観測のために開発されたシステムを再利用する.ただし,カムランド禅ではキセノン入り液体シンチレータ保持のための「ミニバルーン」(直径3.2 m)が取り付けられたため,エネルギー較正用線源がミニバルーンに接触する危険性が高まった.このため,懸架用に用いていたステンレスワイヤーを,強化繊維「ベクトラン」の紐に変更し,線源,懸架用プーリーをこれに適合させる改造を行った. また,精密位置モニターカメラ用に,光学系の開発を行った.バルーンフィルムからのバックグラウンドによる,液体シンチレータの発光を観測することによって,バルーンの位置をモニターできることがモンテカルロシミュレーションによって確認された.そこで,光電子増倍管を用いて一光子を観測するモニターカメラへと設計変更を行った.これにより,受光面積の大きな反射鏡による光学系が必要になったが,光学設計ソフト「ゼマックス」を用いて開発に成功した.ゼマックスの講習会にも参加し経費が生じたが,カメラ開発費の範囲内に収まった.光検出器としては,16×16チャンネル・マルチアノード光電子増倍管を選択し,これを2モジュール購入した.シグナルのパルス高,その印加電圧依存性,ノイズレートなど基本的な性能をチェックし,現在読み出し回路の設計,製作を行っている.反射鏡とマルチアノード光電子増倍管を支える治具を設計し,モジュールとして完成させるため,光学系アラインメントのノウハウ,調整機構の設計に着手したところである.
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