PET樹脂をベースにしたプラスティックシンチレーターであるシンチレックスを輻射体とし、鉛板と組み合わせてサンドイッチカロリメーターを構成し、東北大学電子光理学研究センター(ELPH)の陽電子ビーム(100-800MeV)を用いて検出器の応答性能に関する実験をおこなった。 テストモジュールを支えるフレームには汎用性の高い構造を持たせ,様々な種類の金属輻射体、シンチレーター、集光系デバイス、フォトン・カウンティング・デバイスを組み合わせて実験がおこなえるようにした。2015年度は2台製作した。1台は「鉛板 2mm+シンチレックス 1mmx5」20層(7.5X0)、もう1台は「鉛板 2mm+プレスティックシンチレーターEJ-200 5mm」20層(7.4X0)という構成を取り、検出器サイズ、ライトガイド、光電子増倍管は2台とも同仕様とし、輻射体の違いによる応答性能等の比較実験がおこなえるようにした。また、ビームに対してカスケードに配置したときには、2台あわせて輻射長が14.9X0程度となり、通常のカロリメーターとして利用できるように設計した。 宇宙線および陽電子線を照射したときの輻射体のシグナルの時間応答を比較した。立ち上がり時間はほぼ同様の特性を示したが、減衰時間については60-100nsほどシンチレックスの方が長く、シンチレーターに含まれている波長変換剤の影響を強く示唆するものであった。 陽電子線に対する応答の線形性はEJ200、シンチレックスともに良好で、原点でのずれも定性的にはシミュレーションを再現していた。エネルギー分解能についてはEJ200で~13%、シンチレックス~15%であった。両者の獲得光量の差からすると、分解能の差は小さいものであったが、それは検出器からの漏れ出しによるものと推測された。 またGeV-γビームラインの中核を構成するMWDCの開発を継続した。
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