研究課題/領域番号 |
25400296
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
池田 大輔 東京大学, 宇宙線研究所, 特任助教 (60584258)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 国際研究者交流(米国) / 宇宙線 / 電波エコー観測 / 電子加速器 / TA実験 |
研究概要 |
本研究では超高エネルギー宇宙線の起源の解明のための将来の10万平方キロメートル級の大規模超高エネルギー宇宙線検出器を見据えた、電波を用いた空気シャワー観測手法の確立を目的としている。特に空気シャワーが送信電波を反射する事を利用した電波エコー法、及び前実験にて観測された自発的に発生する電波に着目し、Telescope Array (TA)実験との空気シャワー同時観測実験に取り組んでいる。 本年度には電波送信器の大幅な改善を行なった。これまでTA実験サイトには54.1MHz, 1.5kW出力の送信器が設置されていたが、これを最大出力40kW、アンテナゲイン22dBiの物に置き換えた。設置場所の最適化も含め、信号強度は最大1000倍程度大きくなることが見込まれている。本年度にはビームパターンの測定や出力安定性の向上を行ない、現在25kWにて安定して稼働しており、来年度には40kW出力による運転を予定している。 また受信器に用いるアンテナとしてクロスマウントされたログペリオディックアンテナを選定、購入した。これにより偏波毎の測定が可能となり、電波エコー信号(水平偏波)と、他の空気シャワーに起因する事象(地磁気による物や地表にシャワーコアが衝突した際に生じる電波等)の分離が可能である。また、最短でも数秒の遅れが生じるTA実験の地表検出器トリガーに対応するため、大容量バッファを用いたDAQシステムを開発した。TAサイト中央にあるレーザー射出施設において受信器単体の運転試験を開始しており、アンテナ設置の許可が下り次第TA実験との空気シャワー同時観測を開始する。 また本研究の主題である電波を用いた空気シャワー観測に関しては、本年度行われた宇宙線国際会議にて発表を行なった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
予定していたTA実験の電子線形加速器(ELS)を用いた試験は来年度以降に回し、TA実験との同時観測に用いる送信器及び検出器の開発に注力した。 受信器についてはクロスマウントされたログペリオディックアンテナを用いた物を開発し、元の設計であった偏波毎にアンテナを立てるのではなく、一つのアンテナタワーで水平、垂直両偏波の電波を同時に観測できるように改善したため、アンテナ方向調整において両偏波の方向調整を容易にした。特に水平偏波で送信される電波を用いて垂直偏波アンテナの方向も合わせる事が可能になった事は大きな改善点である。 また実装が困難であったTA実験の地表検出器トリガーを用いたデータ取得に関しても、大容量バッファを用いたDAQシステムを開発したことで実現した。アンテナ設置は米国土地管理局からの許可を待っている段階であるが、アンテナ以外のシステムについてはすでに稼働を始めており、長期における安定した動作を確認している。 送信器に関しても大出力送信器の問題点であった送信電波安定性に関して解決でき、また最大出力による運転における問題点がパワーアンプの周波数特性であったことを突き止め、これを交換する予定である。以上の進歩状況より、来年度には予定通り、40kW出力の電波を用いたTA実験との同時観測の開始が可能であると見込んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
受信用のアンテナ設置許可が下り次第、アンテナを設置し、TA実験との空気シャワー同時観測を開始する予定である。当初の予定では受信用アンテナはTA実験の地表検出器を囲むように設置する予定であったが、効率及び申請にかかる時間を再検討した結果、TA実験サイト中央にあるレーザー射出装置付近に複数設置し、観測を行なう予定である。 また現在の受信システムの問題点として、その消費電力(~100W)がある。これはソーラーパネルで賄うには大きいため、現在は設置場所が既存のインフラが存在している場所に限定されてしまう。これは現在の受信器における処理の大部分をPCのCPUで行なっている、という点が大きく、これを改善すべく新たなエレクトロニクスの開発を視野に入れている。これが実現された場合には、より効率的な場所に複数アンテナを設置し、より感度の高い検出方法により空気シャワー観測を行なう予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
2014年1月に発注した受信器用アンテナ及びアンテナタワーの制作がメーカー側で遅れ、納品が年度内に完了しなかった為。 上記アンテナ及びアンテナタワーは2014年4月に納品されており、その費用及び米国輸送の際に発生した関税の支払いに使用する予定である。
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