本研究では将来の大規模超高エネルギー宇宙線観測手法の確立を目的とし、電波を用いた観測手法について研究を行なった。特に超高エネルギー宇宙線が大気に突入した際に生成される空気シャワーの軌跡に沿って生成される低エネルギー電子群を電波散乱体として用いる電波エコー法、及び前実験にて電子ビームを用いた実験を行なった際に観測された、電場の急激な変化によって発生する電波の2つに着目している。 電波エコー法については前年度にテレスコープアレイ実験サイトに設置した電波検出器を用いた試験を継続している。観測は安定して行われており、現在データの解析を進めている。電波エコー法に関しては同サイトで行なっているTARA実験グループからの報告により、大気分子との衝突による散乱断面積の減少がおきている可能性が指摘され、本実験開始時に期待されていたほど電波強度は大きくない事が判明した。 一方、テレスコープアレイ実験サイトに設置されている電子加速からのビームを用いた実験は、我々以外にも甲南大学や千葉大学のグループらも行ない、我々が観測した電波を別の帯域で観測することに成功した。そこでこれらのグループと共同で研究を進め、50MHz-12GHzまでの広い帯域に及ぶ複数の実験結果について良く説明できるモデルの開発に成功している。この電波は空気シャワーが地面を通過する際にも発生することが分かっており、空気シャワー観測への応用が期待されている。特に南極の氷を用いてニュートリノ事象を観測する事を目的とした研究がシカゴ大学の学生によって進められている。
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