本研究の目的は、XMASS実験における暗黒物質探索において、バックグラウンド源となる、キセノン中に含まれるラドンを超低バックグラウンドなフィルターへの吸着によって除去する技術を開発することである。これによって、XMASS実験における暗黒物質探索感度を上げることを目標とする。また、キセノンを用いた暗黒物質探索実験、2重ベータ崩壊実験などの超低バックグラウンド環境での実験の感度向上に重要な要素となる。 平成27年度は、フィルター候補の選定及び、ラドン除去、検出装置用関連設備の開発、購入を行った。 ラドン除去装置については、フィルター冷却用熱交換器付き容器の開発によって、高効率での熱交換による低温から常温へのガス循環が可能となった。これは、低温であるほどラドン除去能力が向上するという特性に即したものである。また、フィルター部材として、複数の選定を行い、購入した。 フィルター部材自身からのラドンの湧き出し(emanation)を極限まで抑える必要がある。そのために超低バックグラウンド環境の高感度ラドン測定器によるラドンemanation測定セットアップも開発した。このセットアップのラドン検出感度は従来のemanation感度の1/10以下である。これらのフィルター系、冷却系、ラドン検出系を組み合わせて、ラドンを含有するキセノンを低温化、循環して、キセノンによるラドン除去試験が可能となった。ラドン除去フィルターの性能を確認するため、フィルター部材、長さ、温度、キセノン流量を調節できるようにし、ラドン除去のために適正なパラメータをとることも可能である。
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