研究課題
基盤研究(C)
初年度は、当初の予定通りPZT検出器の大型化と高機能化に向けた開発のための実験に用いるプレアンプ・ガス銃によって打ち出された微小球の速度計測用センサーなどの装置製作を行った。装置の製作にあたって、後述のように静電加速器による実験結果を設計に反映するために業者との打ち合わせに多少時間がかかったものの、これらの装置については、年度内に製作を終了することができ、現在性能評価および本年度実施予定の実験に向けて準備を行っている。本研究では、高機能化と大型化のために信号の読み出し方を工夫することを予定しているが、初年度のうちにダスト静電加速器を使う機会を得たので、従来のプレアンプながらデジタルオシロスコープでの信号波形記録のサンプリング周波数を従来に比べて高くして実験を行った。この結果、従来の実験では確認することができなかった、板状のセンサー内部の応力波の振動が、厚み方向(面外方向)と面内方向の成分が、周波数によってはっきりと分けられることが分かった。この知見は、センサーから出力される信号が実際に衝突面に衝突する微小ダストか否かを判定するために重要なことであると考察している。そしてこの実験によって、センサーから読み出す信号の読み出し方、つまりどの周波数帯をどの程度のサンプリング周波数で記録すればよいかが分かった。これらの結果は、本年度中に学術雑誌に投稿すべく準備をしているところである。また、予定にはなかったものの、国際宇宙ステーションへの補給機HTVに微小宇宙デブリ(1ミクロン程度の人工の微粒子)の観測装置を搭載することになり、ダストではなく人工デブリではあるが、観測対象としては物理的な特性はほぼ同じである。申請者が研究しているPZTセンサーを利用した装置を搭載するということで共同研究の声がかかり、装置の設計、主に信号の読み出し方法についての最新の実験結果を反映させた。
1: 当初の計画以上に進展している
当初予定した静電加速器による実験は、年度後半に、東海村の東大重照射研究設備HITの加速器を利用したものだった。しかしながら、2年前の震災によって設備・施設が受けたダメージからの復帰が遅れていて、初年度中の実験は絶望的だった。ところが、予定していなかったドイツ・マックスプランクでの静電加速器のマシンタイムを年度の初めに急きょ得ることができた。予定していたアンプ製作は間に合わなかったので実験の実施については逡巡したが、従来使用していたアンプを、設計上発振しやすいものでありながらなんとか調整して使うことができ、そのうえで、従来の実験で記録していた信号波形サンプリングの精度を上げることで、新たな知見を実験的に得ることができたことと、その結果・知見をアンプの設計・製作に反映することができたのは、予想外の成果であったと考えている。そのほかにも、研究実績の概要のところで述べたように、国際宇宙ステーションに搭載する微小宇宙デブリの観測装置についての共同研究は、打ち上げが2014年度ということで、必ずしも本研究の集大成を反映できたわけではないが、実際に宇宙機に搭載するうえでの環境・電力・通信などの制約を考慮しながらのセンサー性能の向上の議論に加わることができ、その意味でセンサーの基礎開発を目的としている本研究にも、将来への展望を具体的な形で描きやすくなったことは、研究の達成とは若干異なるかもしれないが、大きな成果だったと考えている。一方、PZTセンサーの出力信号を電流電圧変換アンプで読み出し、よりサイズの大きなダストの速度とサイズの測定を行う試みについては、必要な速度まで加速されるように、申請者手製空圧銃の整備を行ったが、それとは別に同じ研究センターで火薬を使う衝突銃が導入され、微小球も加速することが試運転で確認でき、外部の施設に頼らずより幅広い速度が利用できるようになった。
まず、1ミクロンサイズのダストを対象としている、チャージアンプを利用したセンサーについて述べる。当初の計画では、次年度である今年度には、ドイツ・マックスプランクの静電加速器にて、初年度に製作したアンプを利用して実験する予定であった。しかしながら、ドイツの共同研究者側の都合により施設自体の利用が停止し、実験ができなくなってしまった。現在他の施設を使えないか、調整を続けているが、今年度中には昨年度利用するはずだった東海村の東大HITの加速器施設が復旧することが期待されるので、国内での実験を行う予定である。実験準備については、どこの施設でも可能であるように進めている。そして、実験を行って新しく製作したアンプ性能の確認および読み出した信号の処理方法などを検討し、前年度行った実験の結果の解析と併せて、センサー面積の大型化に向けた考察をおこなう。次に10ミクロン以上のサイズの大きなダストを対象とする、電流電圧変換アンプを利用したセンサーについて述べる。こちらの方は基本的に内部で持っている設備を利用するので、外部要因には左右されず開発のための実験を進められる。数百m/秒までの速度範囲では、手製空圧銃を利用するが、銃身の長さを現行60cmから1m以上に延長する必要を確認しているので、これを手配して残りの期間はデータ取得の実験およびデータ整理を行う。1km/秒以上の速度範囲では、当センター所有の火薬を利用した2段式ガス銃を使用するが、微小球を加速するコンフィグレーションでの実験をどのようなスケジュールで行うか、担当者と協議しながら実験をすすめ、低速実験と同様に残りの期間では実験データ取得およびデータの整理を行う。
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LPI Contribution
巻: 1777 ページ: 2080:2081
Japanese Journal of Applied Physics
巻: 52 ページ: 126604-1:5
10.7567/JJAP.52.126604