研究実績の概要 |
励起エネルギー10MeV領域の電気双極子遷移(E1)強度と原子核表面に現れる中性子スキンとの関連を明らかにするため、兵庫県立大学・高度産業科学技術研究所のニュースバル電子蓄積リング施設において稼働中のレーザーコンプトンガンマ線ビームを用いて行ったCr-52の核共鳴蛍光散乱実験データの詳細な分析を行った。その結果、入射ガンマ線ビームの偏光面に対する共鳴散乱ガンマ線強度の非対称性を調べることにより、観測された40本のガンマ線遷移に対して、11遷移の多重極度を決定し、励起エネルギー7から12MeV領域において双極子遷移強度を決定した。また、乱雑位相近似(RPA)模型に残留相互作用として2粒子2空孔効果を取り入れたSecond RPA (SRPA)を用いて、Cr-52の低励起エネルギーの双極子遷移強度の理論計算を行った。2粒子2空孔のモデルスペースとして、中性子は、2s1/2,1d3/2,1f7/2,2p1/3,2p1/2,1f5/2,1g9/2軌道までを、陽子は、2s1/2,1d3/2,1f7/2,2p3/2,2p1/2,1f5/2軌道までを考慮した。通常のRPAでは、5-10 MeVの励起エネルギーに1~2本のピークしか求めることができないが、SRPAでは2粒子2空孔効果によって広いエネルギー範囲に強度が分布することが分かった。この結果は、実験データの傾向と良く一致しており、5-10MeVでの遷移強度の積分値も実験データとほぼ一致することやその値が有効核子間相互作用の違いによって大きく変化しないことが分った。その結果、Cr-52の遷移強度を説明するためには、2粒子2空孔の残留相互作用が重要であると言える。
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