今年度は、ゼロ度ルミノシティモニタ(ZDLM)について、検出器の組立、設置とケーブル敷設、試運転下の加速器における検出器信号のチェックと測定システムの調整を行った。検出器本体は、1つの検出器体に2本のカウンター(輻射体(発光体)と光電子増倍管のセット)をつける構造である。輻射体のおおよその大きさは、15角×60(mm単位)の平行六面体である。石英チェレンコフ輻射体、LGSO無機シンチレータ、プラスティックシンチレータの3種類からそれぞれ2種ずつを選び、2つの検出器体を組み立てた。そしてそれぞれをSuperKEKB加速器の衝突点の陽電子リング(LER)の衝突点下流11mと電子リング(HER)下流30mの地点に設置した。電源と信号ケーブルの敷設は、共同で研究をしているLAL-Orsayのダイヤモンド検出器のグループと共同で行った。電源と読み出し機器をBelleIIエレクトロニクスハットの2階に設置した。 2016年2月よりSuperKEKB加速器の試運転が開始された。陽電子と電子のビームを周回させるが衝突はさせないフェーズ1と呼ばれる段階である。ZDLMは初期のLER入射・周回調整の段階でビームの信号をとらえることに成功し、加速器の調整に貢献した。続いて、HERの信号もとらえることができた。 読み出しシステムも稼働し、チェレンコフ輻射体によって初期の目標の約1nsの時間分解能が確認された。現在とらえている信号は、原子核による制動輻射の信号のバンチ構造をとらえたものである。当初はチェレンコフ輻射体では、個々のパルス信号が小さいことを懸念していたが、検出器が小さく集光率がよいこと、磁場の影響が小さいことが良い効果を出していると考える。カウントレートについても、LALグループによるシミュレーションによる予想と合っているようである。発光量の大きいLGSOシンチレータの信号のほうは10倍程度大きいパルスが得られている。
|