本研究の目的は暗黒物質検出の感度を上げかつバックグランド事象を落とすことの出来る炭素を用いた低雑音ピクセル半導体検出装置を製作し性能評価を行うことである。本研究では質量が軽い暗黒物質の検出感度を向上させるために、検出器に炭素が含まれている物を用いる。これにより暗黒物質との弾性散乱によって原子核の受け取るエネルギーを大きくなり信号対雑音比を向上させ検出感度を上げる事が可能となる。更にピクセル検出器にすることで検出事象の時間分解能を上げ、バックグランド検出用測定装置とのコインシデンスをとることでバックグランドを落とす。この目標のために、炭素を含むダイヤモンドとSiCを検出媒体として選択し、低雑音ピクセル検出器を製作し、評価のためのピクセル検出器の読み出し集積回路の開発を行った。 ダイヤモンド検出器はパッドとピクセルの2タイプを製作し、静特性と電荷収集効率を測定した。ダイヤモンド基板は購入し、結晶処理、電極製作は連携研究者の研究室にて行わせていただいた。静特性については、パッド、ピクセル共にコンシステントな結果を得、目標性能を達成するための充分な結果を示した。電荷収集効率は、複数の結晶にわたってばらつきが大きく、結晶基板の欠陥による性能ばらつきを抑える事が今後の課題となることが明確になった。SiCはピクセル検出器を製作し基板上に成長させた結晶性の良いepi層を利用して検出器を製作した。厚さ150μm程度までの検出器で静特性を評価し使用に充分な性能である事を確認した。 更に上記の検出器の詳細評価を行うための超低雑音フロントエンド集積回路を製作し、ENC~70+2.6Cdet(electron)という高い性能を示し、目標性能を充分に達成した。これらの成果を基により大きな規模の検出器の製作について検討できる基本的な情報を得る事が出来た。
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