研究課題/領域番号 |
25400309
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研究機関 | 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構 |
研究代表者 |
野村 正 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 素粒子原子核研究所, 准教授 (10283582)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | K中間子稀崩壊 / 大強度中性ビーム / J-PARC |
研究実績の概要 |
本研究は大強度陽子加速器施設J-PARCで行われる中性K中間子の稀崩壊探索実験において、大強度中性ビームの品質診断を行い、背景事象の定量的評価と実験感度への影響を研究するものである。研究対象の崩壊過程はCP対称性を破る事象であり、素粒子標準理論によれば100億回に数度の確率でしか起きないと予測されている。このような稀な過程の研究においては背景事象の抑制と弁別が重要である。本研究では中性ビーム自身に起因する背景事象について詳細に研究し、実験感度の向上に結びつけることによって、この過程の世界初の観測を目指すものである。 平成26年度には中性ビームの位置分布の計測装置の開発、および、背景事象を作り出す中性子反応を意図的に作り出して特徴を調査するための可動ダミー標的の増強を行った。前者として、当該研究を進める実験グループと協力し、ガスワイヤーチェンバーを用いた中性ビーム測定装置、蛍光板とCCDカメラを用いたビーム位置測定装置を開発して、探索実験用の検出器への組み込みを行った。後者としては、中性子反応を起こさせるためのダミー標的としてアルミ板およびタングステンワイヤを用いることとし、これらを真空中で駆動する装置を製作して組み込んだ。平成26年度中に現場での動作まで確認し、平成27年度にビームを利用した評価を進めるための準備を完了した。 また、平成25年度に収集したデータについて稀崩壊探索用の解析と背景事象の評価を行い、100時間あまり収集した段階での探索結果の発表につなげている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
J-PARCハドロン実験施設でのビーム利用運転が平成26年度中には再開されず、開発した検出器などをデータによって実証するところまで到達できなかったため、次の段階の検出器開発に進めず、やや遅れているという評価となる。
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今後の研究の推進方策 |
平成27年4月よりJ-PARCハドロン実験施設は利用運転を再開し、ビームを用いた実証試験の遂行が可能となった。平成27年4月現在、性能評価のためのデータ収集を行っており、順次解析を進める。その結果を踏まえてビーム時間構造をモニターする装置を開発し、6月および秋のビーム利用運転で性能評価を行うとともに、データ解析によってK中間子稀崩壊過程に対する背景事象の評価と削減策の開発、物理結果の導出に結びつけていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成26年度にビーム利用運転の再開がなされず、性能評価を経てから進めるべき事項は積み残す必要があったため。
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次年度使用額の使用計画 |
平成27年4月よりビーム利用運転が再開されたので、これまでに製作・組み込みを行った計測装置の性能評価について5月中に完了させられる。これに引き続いて、装置の改良、当初計画であるビーム強度モニターと時間構造モニターの開発へと進み、当該額を使用する。
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