研究課題/領域番号 |
25400312
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 独立行政法人理化学研究所 |
研究代表者 |
中川 格 独立行政法人理化学研究所, 仁科加速器研究センター, 専任研究員 (60505668)
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研究分担者 |
今津 義充 独立行政法人理化学研究所, 仁科加速器研究センター, 特別研究員 (20593677)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | トリガー回路 / シリコン検出器 / 電子回路 / 原子核実験 / 検出器 / FPGA |
研究概要 |
まずトリガー回路開発に先立って、理研テストベンチ内に既存のFVTX検出器とその読み出しシステム一式を設置する必要がある。このセットアップを組むにはFVTXシステムに関する専門的な知識が必要であるが、当研究開発チームはFVTXシステムの開発に携わってこなかったので、必要な知識に乏しい。そこで研究代表者がFVTXシステムの開発母体である米国ロスアラモス国立研究所に一週間滞在し、現地で既存のセットアップを用いて知識と研鑽を積んだ。その後7月頃に計画通りロスアラモス研究所よりスペアFVTXシリコン検出器と読み出し回路一式の提供を受け、理研テストベンチ内にセットアップを組んだ。データ収集用のパソコンを購入し、FPGA等のハードウェア制御用ソフトウェアー等必要なアプリケーションのインストールも完了した。7~8月にはロスアラモスからエキスパートを招聘し、セットアップの様々な部分で直接手ほどきを受けた。セットアップにあたりFVTXシステムの読み出し回路は複数の読み出し回路がそれぞれ電気信号や光信号を介して信号を通信するため、回路間での信号が正しく受け渡されているかのコミュニケーションテストをそれぞれの回路間で確認しながら行った。この過程で、コミュニケーションが思うように動作しないケースが多々あったが、主に印加電圧の電圧降下を見過ごしていた、回路上のジャンパーケーブルの接触が悪くなっていた、等の原因であった。このように様々な問題が生じたが、必要に応じてエキスパートの指南を受け、デバッグ方法を学ぶ等して解決し、さらに理研の開発チームにノウハウも蓄積してきた。このセットアップと理研で独自に測定した回路のパフォーマンス測定結果は、立教大学学部生2名の卒業論文として2月にまとめられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
読み出し回路のチェーンテストは比較的順調に進められたものの、検出器からの信号取り出しには高いノイズレートに苦しめられて難航した。米国にある既存のテストベンチセットアップと同じ器機を使っているのにも関らず、こちらではノイズレートが圧倒的に高かった。そのため直流電源への供給電源の安定性や電磁シールド、接地方法の工夫を徹底して行うことで年度の変わった4月にようやく実用に堪えるレベルまでノイズを下げる事に成功した。時間がかかった最大の理由は既存のセットアップと動作が同じ事を一つ一つ確認しながらデバッグできたデジタル部分とは勝手が違い、アナログである検出器部分のパフォーマンスはセットアップ環境の違い(たまたま付近にノイズ源がある等)に強く依存し、独自にデバッグ方法を確立し解決しなければならない要素が多かった事が挙げられる。 またFVTXシステムの開発に携わったエキスパートは皆米国にいるため、招聘期間以外は彼らの指南を受けられるのはメールや電話に限られ、ほぼ昼夜逆転の時差のために時間的効率は悪かった。
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今後の研究の推進方策 |
検出器を含めたセットアップが完了した事により、トリガー開発へ必要なインフラが整備された事になる。開発へ進む第一歩として、現行読み出し回路 の読み出し時間の測定を行っている。PHENIXシステムではトリガー統括モジュールが複数のトリガー検出器システムからのトリガー信号を集めて、最終的なトリガー信号を発行する機構になっている。ここで全ての検出器からのトリガー信号は、衝突が起きてから約1.6マイクロ秒以内にこのトリガー統括モジュール受け取らなければならない使用になっている。FVTXシステムでは、信号の読み出しにかかる所用時間が正確に計られていないので、まず検出器のヒット信号をトリガー信号として分岐させる時点までの所要時間を測定中である。この測定により新たに追加予定のトリガー回路に費やせる信号処理時間が決まり、大まかな構想を練り始める事ができる。構想が固まったら、民間回路組み立て企業と相談の上回路のデザインを最適化しプロトタイプの制作に進む。今後はエキスパートから効率よい助言を得られるように、本研究チームがなるべくロスアラモスへ出向いて、エキスパート等の傍らで極力開発を進める計画である。
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次年度の研究費の使用計画 |
1. 予定外の出費:VMEクレート50万円。テストベンチ用の読み出し回路に電源供給する一般規格フレームで、当初研究室内に既存の装置の使用を見越していたが、研究室内他の研究とバッティングしてしまい交渉の末科研費支給のある当研究が新しいクレートを購入する事になった。2. 執行出来なかった予算:プロトタイプ制作費70万円。テストベンチにおけるFVTXシステム設置の遅れにより、プロトタイプ制作に進めなかった。 開発をプロトタイプ制作へ進め、予定通り2~3回程度の制作/テストを繰り返す。 またFVTX検出器開発母体である米国ロスアラモス研究所に趣き、従来の計画よりも長く滞在する事でより効果的な開発を進める。今年度未執行分予算はその滞在費に充填する計画である。
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