研究課題/領域番号 |
25400317
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
江澤 雅彦 東京大学, 工学(系)研究科(研究院), 講師 (10504805)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | トポロジカル原子層物質 / バレートロニクス / スキルミオン / スカーミオン / 原子層物質 / トポロジカル絶縁体 / ワイル半金属 / トポロジカル散逸構造 |
研究実績の概要 |
本年度の研究成果は、原著論文12本、招待講演6回、著書1冊と当初の計画以上に成果を上げることができている。主要なる研究成果は原子層関連および磁性体中でのSkyrmion関連に分けられる。 ●原子層関係の研究:1)アルミニウムの一原子膜が構造安定であることを第一原理計算で示し、金属であることを示した。2)またIV属とVI属でできた原子層物質を第一原理計算で構造安定性を示し、バンド構造を決定した。これはフォスフォレンの二原子混成物質に対応する。 ●スカーミオン関係の研究:1)反強磁性結合した二層磁性体中のSkyrmionではマグナス力が相殺するために Skrymionホール効果が完全に抑制されて電流駆動で直進する事を示した。2)スピン分極電流を印加することによって、Pontryagin数が2のSkyrmionを生成できる事を示した。これは非平衡状態のみで実現するトポロジカルに保護された散逸構造である。3)Skrymionは実空間のBerry曲率を持ち、トポロジカル・ホール効果を起こすことが知られているが、Skyrmion結晶中ではホール伝導度が量子化する量子トポロジカルホール効果を予言した。また、ナノワイヤ中のSkyrmionの位置を電極をつけることで純粋に電気的に計測する手法を提案した。これは電子がSkyrmionの作るBerry磁場を感じて曲がることを応用している。電圧印加で磁気異方性を制御することによって、Skyrmionが通過するかしないかを制御するSkyrmionトランジスタを提案した。 その他の研究:1)トポロジカル絶縁体の表面に磁壁が存在する場合のゼロ・エネルギー状態を計算し、電荷を帯びることを示した。電場での磁壁の制御の可能性を提案した。2)一般的な三次元ハニカム格子を定義し、ループ・ノード半金属やポイント・ノード半金属が出現することを解析的に示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
「研究実績の概要」に記載したように当初の研究計画を上回る幅広い研究成果を上げている。特に、二層磁性体中においてSkyrmionホール効果が消失することを予言した論文はNature publishing groupが選ぶ「おすすめのコンテンツ」に採用され、また「著者インタビュー」も掲載されるなど大きな反響を呼んだ。また、二次元原子層物質で発達した概念を三次元ハニカム格子に拡張することに成功した論文はPRL Editor's suggestionsに選ばれるなどの極めて高い評価を受けた。更に多くの国際共同研究を遂行することに成功した。Landau-Lifshitz-Gilbert方程式の数値シミュレーションや第一原理計算などあまり従来得意ではなかった手法に関して共著者の協力を得ることで研究の遂行が可能になり、従来の研究計画に比べて大幅な進展を得ることができた。更に多くの国際共同研究を遂行することに成功した。Landau-Lifshitz-Gilbert方程式の数値シミュレーションや第一原理計算などあまり従来得意ではなかった手法に関して共著者の協力を得ることで研究の遂行が可能になり、従来の研究計画に比べて大幅な進展を得ることができた。
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今後の研究の推進方策 |
トポロジカル原子層物質の研究を継続するとともに新たな課題にも挑戦する、Skyrmionの複合系であるSkyrmioniumのダイナミクスやフラストレート系のSkrymionについて研究を遂行する。また、トポロジカル物質の非線形電気伝導現象や非線形光学効果について研究を行う。特に電気伝導におけるsecond harmonic generationによる非線形伝導の検出に関する理論を考察する。また、遷移金属ダイカルコゲナイド系における超伝導現象やスピン・バレー・ロッキングに起因する新奇現象を探索する。
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