セシウム導入前後のスメクタイト鉱物試料について,ポジトロニウム(Ps)寿命計測と陽電子寿命-運動量相関(AMOC)計測を組み合わせたナノ空間解析は,ナノ空間サイトに対するセシウム吸着を分析するために,本研究課題で確立されたルーチンワークである。このルーチンワークを最終年度である平成27年度も引き続き推進した。ヘクトライトやスティーブンサイトなど,サポナイトと類似なスメクタイト鉱物についてもナノ空間計測を推進した。とりわけ最終年度は,特異的に強いセシウム吸着サイト(特異吸着サイト)に着目した。セシウム導入後の試料について,水素イオン指数(ph)が3以下の高濃度塩酸を用いて洗浄し,洗浄した試料に対して再びポジトロニウム寿命計測とAMOC計測を推進し,空間近傍の元素分析を試みた。その結果,ナノシートが一枚層間に挿入されたタイプの局所構造,二枚層間に挿入されたタイプの局所構造が含むオングストロームスケールの空隙中に存在するエッジサイトと酸素六員環が対向するサイトにセシウムが特異吸着することが明らかになった。
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