研究課題/領域番号 |
25400321
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 山梨大学 |
研究代表者 |
川村 隆明 山梨大学, その他部局等, 理事 (20111776)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 反射電子回折 / 反射電子顕微法 / 結晶成長 / 摂動法 / テンソル法 |
研究概要 |
反射電子回折(RHEED)強度図形測定から顕微鏡像を得るための基礎理論について研究を行った。対象とするモデル結晶表面をSi(001)とし、この面上でホモエピタキシャル成長をするときのその場観察した顕微鏡像を回折図形から求めることとした。本研究では摂動法としてテンソル法を使うことを考え、この方法が使える条件を明らかにすることを1年目の大きな目標とした。実際に結晶成長中に現れると想定される表面からの回折強度を計算するとともにRHEED電子の構成する電子強度分布を求め、回折強度と電子強度分布との間に極めて強い相関があることを明らかにした。 具体的には、結晶成長のモニターによく用いられる条件である鏡面反射強度が大きくかつホモエピタキシャル成長に強度振動が見られる条件において、表面が平坦に近く鏡面反射強度が強いときには電子強度分布の積分値もまた大きくなり、逆に鏡面反射強度が弱いときには電子強度分布の積分値鏡面反射強度も弱くなる。このことは表面付近に形成される電子強度分布が鏡面反射強度とともに系統的に変化し、表面の凹凸と強い相関をもっていることを示している。すなわち鏡面反射を含む回折強度図形と電子強度分布とが相関しており、回折強度図形と表面の凹凸とが対応づけられることを示している。 ここに述べた相関と結晶中の短い時間に生じる表面での原子配列とモフォロジーの変化を考えると、テンソル法あるいはさらに単純で計算速度の早い摂動法の適用の可能性が明らかになった。この結果について日本物理学会で2013年秋と2014年春の2回発表を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
結晶成長中の反射電子回折(RHEED)強度から計算によりモフォロジーの実空間変化を高速に再現し、実質的に表面モフォロジーを観測しながら結晶成長を観測し、制御する方法を開発することが研究全体の目標である。そのために必要な高速計算が容易である摂動法を考え、その摂動法の適用できる条件を明らかにすることを第1年度の目標として研究を行った。その結果、摂動としてテンソル法の適用ができることはもちろん、さらに高速に計算できると考えられる摂動法の適用の可能性が明らかになった。 今後、この結果をもとに適用でき得る限り、簡単で高速に計算できる方法について研究を進めることになった。これは当初予定していた通りの目標を達成したと考えられる。予定よりも早く計算に着手することも考えられたが、実際には計算はおこなわなかった。これには予定していたアップル社のMacProの開発と発売の遅れのために、最適化する計算シミュレーション用のコンピュータの購入が遅れたことも一因であった。
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今後の研究の推進方策 |
テンソル法が有効であることがわかったが、それより簡単な方法でも回折強度から顕微鏡像が得られる可能性が出て来たので、簡単な摂動法についてアルゴリズムの開発を行う。またこれとともにテンソル法に基づくアルゴリズムの開発を行い、どちらが有効で、より高速処理が可能かについて研究を進める。簡単な摂動法とテンソル法の開発のときは当然アルゴリズムの開発を同時に行うが、いずれの方法においても、どのような形の摂動を入れていくと位相問題が解けるのかが大きな課題であり、試行錯誤で行うため、最終的な形の摂動法について高速処理ができるアルゴリズムの開発は別途行う必要がある。 現在までに計算を行うためのコンピュータの導入を済ませているが、このコンピュータを利用して、今後本研究に必要な高速処理に適した方法を開発して行く。
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次年度の研究費の使用計画 |
海外の学会での成果発表を予定していたが、平成26年度以降に開催される学会の方が成果発表の場としてより適していることから、平成25年度に海外で開催される国際学会での論文発表を延期することとしたためである。 平成26年度に11月に日本国内で開催される国際学会(International Symposium on Surface Science)での発表を予定している。
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