研究課題/領域番号 |
25400324
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
毛利 真一郎 京都大学, エネルギー理工学研究所, 研究員 (60516037)
|
研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
|
キーワード | 単原子層 / 遷移金属ダイカルコゲナイド / 励起子多体効果 / CVD |
研究概要 |
本研究では、原子層1層で構成される”究極の表面”である単原子層材料を舞台に、究極の理想平面上で励起子(光励起電子ー正孔対)がどのように振る舞うかを明らかにしその制御を目指す。具体的目標として、1)励起子構造・ダイナミクスの解明、2)励起子多体効果の探索、3)励起子ダイナミクスや多体効果の制御の3つの達成を目的に研究を進めている。 本年度(平成25年度)は、以上目標達成に向け、1.化学ドーピングによる剥離単層MoS2の励起子発光ダイナミクスの変調の実現 2.単層WSe2における励起子⁻励起子消滅起因の発光非線形性の観測 3. CVD法によるSiO2基板上への大面積単層MoS2試料の合成などを達成した。 具体的には、F4TCNQをドーピングすることで剥離単層MoS2の発光強度が増強されることを見出した。これは、F4TCNQが剥離単層MoS2中の電子を引き抜く効果を持っており、荷電励起子発光と励起子発光のスイッチングが起きていることで説明できる。また、単層WSe2の発光強度は励起強度を強くすると飽和する。一方、時間分解発光測定の結果、励起強度が増加すると短時間寿命成分が増加することがわかった。モンテカルロ計算の結果から、非常に長い励起子拡散と強いクーロン相互作用に起因した効率的な励起子‐励起子消滅により、発光非線形性が説明できることを見出した。CVD法による単層MoS2試料の合成については、大面積試料と高品質3回対称結晶の合成に成功している。いずれの場合も700度~850度で結晶成長が効率的に進むことを見出しており、現在、さらなる大面積化や高品質化を目指し詳細な条件の検討を行っている。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
良質の剥離試料を入手したため、次年度以降に予定していた励起子多体効果の解明と探索の研究を先行して実施し、励起子‐励起子消滅に起因する発光の非線形性を見出した。また、化学ドーピングが単原子層の電子数制御に有効であることがわかったため、この手法による光学特性の変化の研究を研究し論文にまとめた。このように、1)励起子構造・ダイナミクスの解明、2)励起子多体効果の探索、3)励起子ダイナミクスや多体効果の制御の3つの達成へ向けて順調に研究は進んでいる。大面積架橋FETデバイス作製とそれを用いた光物性制御へ向けて、大面積試料の合成に成功しており、現在この試料を用いたデバイス作製や谷自由度を利用した新しい励起子ダイナミクスの探求に取り組んでいる。
|
今後の研究の推進方策 |
単原子材料の特徴は、スピンと谷(バレー)分極がカップルしている点にあり、その自由度を利用した新しいエレクトロニクスの展開が期待されている。そこで、今後は、大面積FETデバイスの作製とともに、スピンやバレーが関与する励起子多体効果の研究に取り組む予定である。また、高効率太陽電池や高感度光検出器など様々な光電変換デバイスへの利用可能な点も単原子層材料の魅力である。大面積試料を利用した太陽電池の作製なども次年度に取り組む課題と考えている。
|