研究課題
本研究の目的は、“理想的2次元平面”である単原子層物質をターゲットに、励起子(光励起電子-正孔対)がどのように振る舞うかを明らかにし、その制御を目指す点である。特に、1) 励起子構造・ダイナミクスの解明、2) 励起子多体効果の探索、3) 励起子ダイナミクスや多体効果の制御、の達成が目標である。本年度は、シンガポール国立大学との共同研究で、単原子層WSe2の励起子ダイナミクスについて検討を行った。この試料は、報告されているカルコゲナイド系材料で最も発光効率が高い(~0.1)良質な材料であることがわかった。この試料について発光イメージング、発光強度の励起強度依存性、時間分解発光の測定を行った結果、①励起子寿命が4nsと長く、拡散長が1.8μmにも達すること②励起強度の増加と共に励起子-励起子消滅に伴う発光の飽和現象が見られることの2点を明らかにした。これらの結果は、単原子層材料の励起子ダイナミクス・励起子多体効果に大きな知見を与えるものである。また、単層MoS2の励起子多体効果についても検討を行い、ドープした試料において、励起子-励起子衝突を介したキャリア生成とそれに伴うトリオン生成が見られることを示した。さらに、励起子ダイナミクスの制御へ向けて、単原子層ヘテロ構造を作製し、そのダイナミクスを調べた。単層MoS2/単層MoSe2ヘテロ構造において、低温で層間励起子が生成されることがわかった。現在、この単原子層ヘテロ構造の励起子ダイナミクスの詳細についてさらなる実験行っており、この構造を用いた多体効果の制御が可能であるかの検討を行っている。
2: おおむね順調に進展している
申請段階で、目標としていた①励起子ダイナミクスの解明②励起子多体効果の探索について、大きな成果をあげることができた。また、③励起子ダイナミクスや多体効果の制御へ向けた検討も進めており、計画に従い概ね順調に研究が進んでいると評価している。
今後は、単原子層ヘテロ構造の励起子ダイナミクスについて調べ、この構造を利用した③励起子ダイナミクスや多体効果の制御が可能かどうかを検討する。同時に、すでに実績をあげている化学ドーピングやFETデバイスを利用した多体効果制御についても検討を行う。
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