研究課題
電子格子相互作用は物質の性質・機能を支配する最も重要な相互作用の一つである。フォノンによって電子が散乱され、別の電子状態に遷移することが電子格子相互作用の素過程であることが分かっているが、これまではフォノンの運動量やエネルギーについてすべて積分した形でしか実験的に検出できなかった。グラフェンやグラファイトといったカーボンナノマテリアルにおいても、デバイスとしての機能の改善のためにも、電子格子相互作用の素過程の本質を極めることはぜひ必要である。本研究では、グラファイトおよびグラフェンにおいて、ブリルアンゾーンのK点付近にあるπ電子が、光とフォノンによって同時に散乱される間接遷移過程を、高分解能角度分解光電子分光法を用いて世界で初めて観察した。シンクロトロン放射光のアンジュレータビームラインを用い、光エネルギーを選ぶことで特定の終状態および中間状態を選択した時、特定のフォノンによる散乱が共鳴的に起こることを明らかにした。また、運動量保存則を用いて、電子散乱に寄与したフォノンのみの分散を観測することにも成功した。この結果は、フォノンの測定手段として画期的であるだけではなく、電子格子相互作用の素過程のマトリックスエレメントを直接的に検出した唯一の実験研究として重要であると言える。本研究の一部はプレスリリースによって発表されると共に、多くの国際学会でも発表されており、近日中にさらに論文が発表される予定となっている。
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Physical Review B
巻: 92 ページ: 195148
http://dx.doi.org/10.1103/PhysRevB.92.195148