1)金ナノ構造とカーボンナノチューブ複合系の光学応答 金ナノシェル/シリカコア構造とカーボンナノチューブの複合系における光吸収の増強効果は10%程度であることがわかった。チオールをナノチューブに修飾させた試料を合成することに成功したが、複合系における光学応答の増強効果の検証は今後の課題として残った。 2)分子・高分子/カーボンナノチューブ複合系の励起エネルギー移動 ナノチューブ内部においてペリレンからクアテリレン分子の単量体と二量体を合成することに成功した。この複合系では内包クアテリレン分子から半導体ナノチューブへの励起エネルギー移動(EET)が起こることがわかり、その機構を解明した。種々の直径のナノチューブを用いることにより、分子-ナノチューブ間距離を系統的に変えることができるので、本研究により1nm以下の距離における超高速のEETとその距離依存性を明らかにすることができた。フルオレン系高分子でラップされたナノチューブ複合系では、高分子からナノチューブへの超高速のEETが起こることを明らかにした。この移動時間はチオフェン系高分子の電荷移動と同程度であることから、電子交換のEET機構が示唆された。 3)高分子内包カーボンナノチューブ複合系の電荷移動 ポリチオフェンを内包したナノチューブ複合系では、光伝導励起スペクトルは内包ポリチオフェンの吸収スペクトルに対応した信号増大を示し、電荷移動が起こることがわかった。ポンプ・プローブ分光測定からこの電荷移動がピコ秒程度の高速現象であることがわかった。コロネンの重合により合成したグラフェンナノリボン内包ナノチューブ複合系では、電荷移動とEETが存在する結果が得られた。以上の研究により、励起状態の広がりと相互作用の距離が同程度になる複合系における電荷移動とエネルギー移動を総合的に理解することができた。
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