研究課題
本課題では、ここ数年の間に著しく技術が進歩した放射光X線を用いた共鳴非弾性散乱法(RIXS)により、銅酸化物高温超伝導体を対象として、スピン、及び、電荷の動的相関、励起状態を観測し、電荷ドープされたモット絶縁体の電子の運動状態の研究を行った。特に、系統的なドーピング依存性を調べることにより、モット絶縁体がキャリアドープにより金属化していく過程での、電子ダイナミクスの変遷を明らかにすることを目的とした。電子ドープ系については、Nd2-xCeCuO4のRIXS実験から100 meV以上にある高エネルギースピン励起はドープが進むにつれて幅を広げながらより高エネルギーにシフトすることがわかった。一方、ホールドープ系はオーバードープLa2-xSrxCuO4の実験を行った。ホールドープ系の高エネルギースピン励起は、これまでドーピングしてもほとんど分散が変化しないという報告がいくつかなされていたが、この特徴は運動量(pi,0)方向の特徴であり、(pi,pi)方向についてはゾーン端でドーピングによりソフト化していることがわかった。以上の結果から、銅酸化物高温超伝導体のスピン励起は電子とホールで対照的なドーピング依存性を示すことが明らかになった。さらに、電子ドープ系の実験では、Γ点近くでスピン励起よりも高エネルギー側に電荷励起と考えられる励起が観測され、これまでは観測が難しかったΓ点近くの電荷励起の素性も明らかにすることができた。平成27年度はこれらの成果報告・とりまとめに加え、銅酸化物高温超伝導体の類縁物質である梯子格子銅酸化物において、電荷秩序が融解したときに生じる電荷励起、電荷揺らぎのエネルギー運動量依存性を明らかにし、その成果も報告した。
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